大原司法書士事務所

相続の対象になるもの・ならないものとは?相続税の課税対象かどうかにも着目

相続の対象になるもの・ならないものとは?相続税の課税対象かどうかにも着目

カテゴリ:司法書士コラム

相続が開始されると、残された家族、相続人の方などは財産の引継ぎなどに関して様々な手続をしなければならなくなります。場合によっては相続によって金銭的な負担を負うこともありますし、その意味でも、どのような財産が相続の対象になるのか把握しておいたほうが良いです。
また、相続財産かどうかを考えるにあたっては、税制上の問題にも着目することが大切です。純粋な相続財産と言えなくても課税されることがあります。

相続財産になるもの

相続財産には、プラスの価値を持つ財産だけでなく、マイナスの価値を持つ財産も含まれます。以下にその例を挙げていきます。

プラスの財産

現金や預貯金、有価証券や投資信託などの金融資産、骨董品や腕時計、自動車などの動産から土地・建物といった不動産なども幅広く相続財産に含まれます。
「被相続人が不動産を所有しており誰かに貸している」という場合には賃貸人としての地位や、その他契約上の地位や権利なども相続財産となり得ます。

そのため基本的にはあらゆる財産が相続の対象になると考えておくと良いでしょう。
「借地権」や「借家権」、「仮想通貨」、商標権・著作権・特許権・意匠権などの「知的財産権」も対象です。

マイナスの財産

前項に挙げたようなプラスの資産のみならず、借金などのマイナスの価値を持つ財産も相続財産として引き継がれる点、留意する必要があります。
多くの方が相続により経済的恩恵が受けられると考えていますが、実際にはマイナスの財産が含まれていることも多いです。そのため、相続を受け入れるかどうか(「単純承認」をするかどうか)はよく考えて判断すべきです。

例えばマイナスの財産には以下のようなものがあります。

  • 借金
  • 保証債務
  • 滞納している家賃や水道光熱費、医療費、介護費など
  • 滞納している税金や健康保険料
  • 損害賠償債務

特に被相続人が事業を営んでいるケースでは財産状況が相当に複雑化することが予想されます。個人事業主なら事業用資産も含まれてくるため、買掛金などのマイナスの債務が対象になることも出てきます。

何も考えず相続を受け入れてしまうと多額の債務を引き継ぐことになってしまい、結果、自己破産にまで追い込まれてしまうおそれもあります。
相続が開始され、自身が相続人であることを知ってから3ヶ月以内なら「相続放棄」の申述により相続人としての立場を捨てることが可能ですが、一部の財産や負債だけ放棄することはできません。早期に財産調査を始め、相続放棄をするのか、受け入れるのか、判断できるようにしましょう。
なお、相続人全員で揃ってすれば、「限定承認」をすることも可能です。これにより、承継するプラスの財産の範囲内でのみマイナスの財産の返済をする責任を負うことになり、リスクを回避しやすくなります。

相続財産とならないもの

ほとんどの財産は相続対象ですが、以下に挙げるものは例外的に相続財産とはなりません。

被相続人に一身専属的な権利義務

相続財産にはならないものとして、「一身専属的な権利義務」が挙げられます。
本人であること自体に意味があり、他人には移転しない性質を持つ権利義務です。以下がその例です。

  • 雇用契約に基づく「使用者」「被用者」としての立場
  • 委任契約に基づく「受任者」「委任者」としての立場
  • 「親権者」としての立場
  • 養育費の請求権および受給権
  • 生活保護や年金の受給権

賃貸人等の立場などは相続されるものの、委任者や受任者、その他代理人としての立場は受け継がれません。また、本人が履行しなければ意味をなさない類の債務も当然相続対象ではありません。例えばある有名な絵師にイラスト作成の依頼をしていた場合や、有名な作家に執筆の依頼していた場合などです。

祭祀財産

「祭祀財産」は先祖を祭るための財産です。祭祀主催者が承継し、通常とは異なる扱いを受けます。そのためお墓などは遺産分割の対象にはならないとされています。
他にも以下のものが祭祀財産に該当します。

  • 仏具、仏壇
  • 神棚
  • 位牌
  • 家系図

なお、「祭祀承継者」については被相続人が指定可能です。遺言書で「○○を祭祀主宰者とする」といった指定がなされていれば、当該人物が祭祀財産を引き継ぎます。
指定がない場合には、慣習あるいは裁判所に申し立てて行う調停・審判などにより定めます。

本来の相続財産ではないが課税される財産

相続財産は基本的に相続税の課税対象となります。
具体的には「金銭に見積もることが可能な、経済的価値があるすべてのもの」が対象とされています。被相続人が亡くなった時点で保有していた財産には広く課税され、日本国外に所在している財産に関しても対象からは外れませんので注意しましょう。

なお、純粋な相続財産とは言えないものの、課税対象となる財産もあります。
例えば被相続人が亡くなることにより支払われる「生命保険金」や「死亡退職金」などです。亡くなった時点における被相続人の財産とは言えないものの、実質それと変わりないとの評価を受け、一定要件を満たしたときには課税されます。

また、以下にも相続税が課税されますので申告および納税を忘れないように注意しましょう(なお、遺産額が基礎控除額を超えなければ申告・納税の義務は課されない)。

  • 相続開始前3年以内にされた生前贈与
    (相続税負担を避けるために、相続開始直前になって生前贈与する課税逃れの防止)
  • 教育資金・結婚資金・子育て資金の贈与に関し、相続時精算制度を利用して贈与税が非課税になっていた分の残額

この他にも遺産でないにもかかわらず相続税の課税対象になることもありますし、一定要件を満たすことで課税対象から外れることもありますし、詳しくは税理士に相談すると良いでしょう。