大原司法書士事務所

不動産の名義変更は自分でできる? 手続の流れや司法書士を利用すべきケースなどを紹介

不動産の名義変更は自分でできる? 手続の流れや司法書士を利用すべきケースなどを紹介

カテゴリ:司法書士コラム

不動産の購入や贈与を受けたとき、相続があったときなどに、土地や建物に関して名義変更をすることになります。その際、通常は専門家に依頼して手続を進めてもらうことになるのですが、「不動産の名義変更を自分でして費用を下げることはできるのだろうか」と疑問を持つ方もいるのではないでしょうか。
この記事ではこうした疑問が解消されるよう説明をしていきます。

不動産の名義変更とは

不動産に関する名義変更とは「登記簿の所有者名義を変更すること」を指します。
そのため、厳密には「所有権移転登記手続」のことを指しています。

相続や贈与、財産分与、不動産売買をきっかけに名義変更が必要となり、法務局にて所定の手続を進めることになります。その際、多くの書類作成や取得などの準備を進め、さらに登録免許税の支払いも負担しなければなりません。

名義変更をするだけでも大変な作業ですので、「いっそ名義変更せずに放置しておこうか」と考えたくもなります。
しかしながら不動産の名義変更を行わないと所有権をめぐる紛争が起こる危険があります。「私の家だ」「いや、私のものだ」と言い争いが生じたとき、登記に記されている所有者が圧倒的に有利になります。名義変更をおろそかにしていると家や土地を失うことも起こりかねません。
また、相続により取得した不動産に関してはその名義変更をしていないと“10万円以下の過料”を科されるおそれもあります。

不動産の名義変更は自分でもできる

不動産の名義変更は、所有者となる方自身が行うこともできます。
「本人が名義変更をしてはいけない」「特別な資格を持つ専門家でなければ手続ができない」などと規制する法令などもありません。

そのため、次の流れに沿っていけば自分で名義変更はできます。

  1. 管轄の法務局を調べる
  2. 必要書類を準備する
  3. 登記申請書とその他書類を法務局に提出する
  4. 登記識別情報通知を受け取る

 このように見ると、誰でもできる簡単な手続なようにも見えます。
ただ、各ステップを細かく見ていくとそう簡単な作業ではないことに気が付きます。

書類の準備だけでも大変な手間です。
固定資産評価証明書や相続関係説明図、遺産分割協議書、印鑑証明書、遺言書および検認調書、その他必要に応じて様々な書類を作成・取得しなければなりません。遺産分割協議書も、相続人らによる協議を前提に作成されるものですし、その協議を行うためには相続財産の調査や相続人の調査を進めていなければなりません。

その後資料の不備があった場合には不備の修正対応なども必要となります。戸籍謄本の不備であったり記載すべき事項に漏れが見つかったり、何度も戻されることがあります。

しかも名義変更が上手くいかなかったときのリスクがとても大きいです。
最悪の場合数千万円ないし億単位の財産を失うおそれもあります。そのため自分でできるといっても登記のプロである司法書士に依頼するのが一般的で、その方が無難と言えるでしょう。

不動産の名義変更を自分でする場合の注意点

上述の通り、不動産名義の変更を自分でしようとすると大変な手間がかかります。
法務局の窓口が開いている平日の日中に何度も出向かなければなりませんし、効率的に作業を進めることができなければその回数は増えてしまいます。不備があるとさらに手間が増します。

役所が遠方である場合には書類の取得のために移動をすることになったり郵送で取り寄せるための作業が発生したりします。また、遺産分割協議書や財産分与契約書、贈与契約書など、重要な法的書類の作成作業なども名義変更の過程に含まれます。1つのミスによる影響が広がり、甚大な被害を起こす可能性は覚悟しておかなければなりません。

また、名義変更が上手くいったとしてもトラブルが常に避けられるとも限りません。
名義変更のために被相続人の印鑑を持ち出したことがきっかけで、「財産を横取りしたのではないか」などと疑いをかけられて親族間の関係性が悪化する可能性もあります。
別の問題として、専門家に相談することなく名義変更したことにより相続税が予想以上に発生してしまうということも起こり得ます。名義変更の前には相続税対策も考えておくことが大切です。

司法書士に依頼すべきケース

「不動産の数が少ない」「物件の経済的価値が低い」「平日に暇をしている」「権利関係が単純」といったケースでは、ご自身で手続をしてもそれほど大きな問題にはなりにくいです。もちろん、その場合でも大変な作業となることに違いはないのですが、比較的小さなリスクで名義変更ができるでしょう。

一方で、次のようなケースでは不動産登記のプロである司法書士に依頼することを検討すべきです。

  • 名義変更をすべき不動産が複数ある
  • 物件が遠方にあり出向くのが難しい
  • 相続人が多い(相続による取得の場合)
  • 平日の昼間は仕事をしており自由に動くことができない
  • 権利関係が複雑である
  • 被相続人が本籍地を何度も移転している

 その他イレギュラーな事情があると名義変更の難易度はさらに上がります。
不動産の名義変更に慣れていない方からすると、本件が難易度の高いケースなのかどうかの判断も難しいかもしれません。その判断をしてもらう意味でも、まずは気軽に司法書士に相談してみることをおすすめします。