大原司法書士事務所

相続人の調査とは?調査の必要性や方法、注意点について

相続人の調査とは?調査の必要性や方法、注意点について

カテゴリ:司法書士コラム

相続後の手続と言えば遺産分割協議をイメージする方が多いかもしれませんが、他にも多くの手続を行う必要があります。特に遺産分割協議までに行うべき重要なこととして、「相続人の調査」が挙げられます。
具体的にはどのようなことを行うのか、なぜ相続人の調査が必要なのか、この記事でまとめていきます。

相続人の調査とは

相続人の調査とは、被相続人(亡くなった方)にどのような相続人がいるのかを調べ、確定する作業を意味します。

相続人を確定することで、遺産を取得する人物や遺産分割の協議に参加する人物なども把握できるようになります。

相続人の調査の必要性

相続人の調査の必要性は次の3点から説明することができます。

① 遺産分割協議を進めるため
② 相続税申告を行うため
③ 法定相続情報一覧図を取得するため

①に関してですが、本来遺産分割協議に参加すべき相続人がいないまま話し合いを進めても、有効に遺産を分配することはできません。そのため、誰がどの財産を取得するのかを決定していくために相続人の調査は必要と言えます。

また、②の相続税の申告にあたっては法定相続人の数を把握する必要があります。法定相続人の数により基礎控除額が定まり、その数が多いほど控除額は大きくなります。相続人の調査ができておらず本来カウントすべき数をカウントできていないと正しい税額の申告ができないことに加え、必要以上の税負担を負うことになってしまいます。

最後に③についてです。「法定相続情報一覧図」は、法定相続人であることを証明できる書類であり、相続登記や金融機関での解約・名義変更等の手続、保険金の請求などの場面で役立ちます。この書類を取得しておけば相続人全員の戸籍を提出するなどの手間がかからなくなります。しかしながら、法定相続情報一覧図を作成してもらいその写しを取得するには、法定相続人が定まらなければならず、そのためにも相続人調査は欠かすことができません。

相続人調査の手順

相続人調査の基本は、「被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍を取得すること」です。

戸籍を確認することで、被相続人の親子関係、養子縁組の有無、認知した子の存在、結婚や離婚などの履歴も調べられます。そして出生時にまで戸籍をさかのぼることで兄弟姉妹なども明らかになってきますし、関連する戸籍をたどれば祖父母などもすべて判明していきます。 そのため相続人の調査は、戸籍を確認する作業であると捉えておくと良いでしょう。

戸籍の取得

戸籍は、被相続人の本籍地のある市区町村役場で取得できます。戸籍係の窓口に直接行くのでもかまいませんし、郵送で請求することもできます。
被相続人の配偶者や直系親族など一部の親族に限り請求が認められますが、委任状を用意すれば、司法書士などの専門家に代理人として作業を任せることもできます。(相続登記などを委任した場合には、戸籍取得の委任状がなくても戸籍取得をしてもらえます。)

チェックに漏れがあると遺産分割協議が無効になる危険がありますので、確実な調査を進めるためにも専門家への依頼がおすすめです。

なお、戸籍取得の際には、申請書や委任状のほか、請求者の顔写真が載った身分証明書(マイナンバーカードや運転免許証など)の写し、印鑑、費用を用意する必要があります。
戸籍謄本の取得には450円、除籍謄本や改製原戸籍謄本の取得には750円がかかります。

相続人の調査で注意すべきこと

相続人の調査をご自身で行う場合、以下の事柄に注意しましょう。

戸籍のすべてを取得すること

相続人の調査を進めるにあたり、「戸籍謄本」「除籍謄本」「改正原戸籍」のすべてを取得していくことになります。

これは、被相続人の死亡時から出生時までの戸籍を遡っていく過程で、戸籍の所在地が変わったり、法律改正で戸籍の様式が変わっているのが一般的なので、どうしても複数の戸籍が必要になるからです。

戸籍謄本とは、戸籍原本に記載の内容をそのまま写したものです。実父母の情報、養親の情報、配偶者の情報などが確認できます。
※戸籍抄本は、戸籍原本の一部を抜き出したものの写し

除籍謄本とは、結婚や死亡、本籍地の移転などにより戸籍内の全員がいなくなったときに作成される戸籍の写しのことです。

改製原戸籍とは、法改正により戸籍が改製される以前の戸籍の写しのことです。これまでも何度も法改正により作り直しは行われています。コンピューター化以前の紙の戸籍が典型です。戸籍の改製があると、結婚や死亡等により除籍された人は新しい戸籍に記載されなくなるため、それらも含めたすべての情報を調べるためには改製原戸籍の取得も必要となるのです。

死亡・相続放棄の有無

戸籍を確認して相続人となるはずであった人物が判明しても、その方がすでに亡くなっている、あるいは相続放棄をしているケースがあります。

すでに亡くなっている場合であって、さらにその方に子がいる場合には「代襲相続」により相続人の範囲が拡張されることがあります。
例えば被相続人の子が亡くなっていて、その子にはさらに子(被相続人にとっての孫)が2人いたとしましょう。孫2人は代襲相続により本件相続において相続人となり、全体として相続人の数は増えることになります。

これに対して「相続放棄」では“初めから相続人ではなかった”という扱いになります。
そのため相続放棄をした方に子がいたとしても代襲相続は起こりません。
そして、相続放棄に関しては戸籍謄本に記録されないことに留意しなければなりません。他の相続人が相続放棄をしているかどうかを確認するためには、家庭裁判所から「相続放棄申述受理証明書」を出してもらう必要があります。

相続欠格・廃除の有無

「相続欠格」や「廃除」の有無にも着目しなければなりません。

〇 相続欠格:
欠格事由(被相続人を殺害したり殺害しようとしたりして刑罰に処される、騙す・脅すなどして遺言書の内容を変更させる、遺言書を書き変えるなどして不当な利益を得ようとする など)に該当して相続権を失うこと
戸籍には記載されませんが、このような事件が起きていれば親族間では認識されているのが一般的です。

〇 廃除:
被相続人に対する虐待や重大な侮辱行為、著しい非行があった場合などに被相続人が廃除の手続を行い、相続権を奪うこと
家庭裁判所で廃除の審判が下り、戸籍にその旨記載されます。

相続欠格となった方、廃除された方は相続権を失い、相続人ではなくなります。
この場合も死亡の場合と同様、その子に代襲相続権が発生します。

 

相続人調査の詳細に関しては専門家に聞いてみるか、調査自体を依頼すると良いでしょう。
スムーズに相続人を調べることができ、素早く遺産分割協議に着手することができるようになります。