大原司法書士事務所

相続手続き全体の流れを整理!不動産がある場合の遺産分割手続きについても解説

相続手続き全体の流れを整理!不動産がある場合の遺産分割手続きについても解説

カテゴリ:司法書士コラム

相続が開始されると、相続人等は様々な手続きに追われることとなります。多様な財産がある場合や相続人が多い場合にはより複雑化します。
そこでまずは全体像を掴んでおくことが大事です。ここでおおまかな流れを解説していきますので、相続が開始したときの参考にしていただければと思います。
またここでは、事案が複雑になりやすい不動産の相続手続きについても言及します。

相続開始後の手続きの流れ

相続開始後、多く場合以下の流れに沿って手続きが進行していくことになります。

1. 遺言書の確認と検認手続き
2. 相続人となる者を調べる
3. 相続の対象となる財産を調べる
4. 相続を受け入れるのか放棄するのか選ぶ
5. 相続人間で遺産分割協議を行う

各手続きの内容や注意点を説明していきます。

遺言書の確認と検認手続き

まずは遺言書の有無を確認しましょう。
亡くなった方が遺言書を作成していた場合にはその内容に従って財産が処理されていきますので、この確認なく遺産分割の協議などに着手すべきではありません。
特に、生前に「遺言書を作ってある」というようなお話を聞いていた場合には、まずは遺言書を探す所から始めなければなりません。
そこで、遺言書を探します。
遺言書には、次の種類があります。

1. 公正証書遺言
公証人役場で作成する遺言書で、証拠能力が高く、家庭裁判所での検認手続きを要しません。また、遺言書通りの相続手続きを実施できるので、あらためて相続人や相続財産の調査を要しないというメリットがあります。
作成した公証人役場がわかっていれば、遺言の存在や内容を検索してもらえます。
2. 自筆証書遺言(遺言書保管制度利用分)
遺言者が自筆で作成した遺言書を登記所(遺言書保管場所)に預ける制度です。
この場合も、家庭裁判所での検認手続きを要しませんし、相続人や相続財産の調査も要しません。
保管した登記所がわかっていれば検索してもらえます。
3. 自筆証書遺言(遺言書保管制度以外で保管したものい)
遺言者が自筆で作成した遺言書を、自宅や知人、弁護士事務所等で保管しているもので、この場合には家庭裁判所での検認手続きが必要になります。
検認手続きでは相続人に出席を求める必要があるため、相続人の調査や他に相続財産がないかなどの調査が必要になります。
4. 秘密証書遺言
遺言者が自筆で書いた遺言書を公証人の面前で封印し、遺言書の存在自体はオープンになるが、内容は秘密にできる制度です。この場合も家庭裁判所での検認手続きが必要なので、あまり利用されていません。
家庭裁判所での検認手続きというのは、その時点における内容を裁判所が確認し、それ以降の改ざん等を防ぐための手続きです。

相続人となる者を調べる

遺言書がない場合には、法定相続分による相続や、相続人全員による遺産分割協議によって遺産の帰属を決めていくことになります。このため、遺言がない場合などには相続人の調査が欠かせません。
相続人の調査には、法定相続人の理解が必要になります。

1. 配偶者は常に法定相続人になる。
2. 子は第一順位相続人である。
単純なパターンは、旦那さんが亡くなって、奥さんとお子さんが法定相続人、という 核家族のケースです。これなら相続人調査はここで終了できます。 なお、お子さんが今回亡くなった方より先に亡くなっている場合は、お孫さんが相続人になります。(これを「代襲相続」といいます。)
3. 直系尊属は第二順位相続人である。
お子さんがいなかった、先に亡くなっていてお孫さんもいない、というような場合には、亡くなった方の親御さんが法定相続人になります。
旦那さんが亡くなって、未亡人と舅・姑が相続人になるケースです。
若くして亡くなり、舅・姑が先立たれている場合には、祖父・祖母が相続人になることもあります。直系尊属が一人でも存命なら、調査はここで終了します。
4. 兄弟姉妹は第三順位相続人である。
相続人調査で一番厄介なのがこのケースです。
お子さんがなく、親御さんももう先立たれているが、亡くなった方には兄弟姉妹がいた、となると、調査対象が一気に広がります。
まず、親御さんの戸籍に遡って、兄弟姉妹が何人いるかを確定する必要があります。 兄弟姉妹には異父兄弟・異母兄弟も含むので、親御さん双方の出生以降の戸籍を調べる必要があります。
また、その兄弟姉妹が今回亡くなった方より先に亡くなっている場合、その子にも代襲相続権があるので、それも調べる必要があります。
調べる対象が離婚や結婚、養子縁組などを繰り返している場合にはこの調査だけでも 大変な作業となります。
このケースに当たったら、専門家に相談した方が得策と言えるでしょう。

相続の対象となる財産を調べる

「誰が相続するのか」が確定できれば、次に、「何を相続するのか」を確定させます。 そこで被相続人の財産調査を始めます。
特に、多額の遺産がある場合には相続税の申告の問題がありますので、早めに調査を開始します。
被相続人の一身専属的なものを除いて、基本的にはあらゆる財産がその対象となります。 例えば現金・土地・建物・自動車・腕時計・貴金属・債権・株式などは相続の対象です。住宅ローンを組んでいたり借り入れをしていたりする場合には、マイナスの財産であるその債務についても対象となる点注意が必要です。
なお、一身専属で相続の対象外となるものには、被相続人の契約上の地位や資格などが該当します。

相続を受け入れるのか放棄するのか選ぶ

財産の調査ができれば、マイナスも含めたその財産を受け入れるのかどうか、その判断をしましょう。

まるまる受け入れることを「単純承認」と呼びます。
この場合には別途手続きをする必要はありません。相続開始を知ってから3ヶ月以内に何もアクションを起こさなければ単純承認をしたものとみなされます。言い換えると、単純承認以外をする場合には3ヶ月以内に対応しないと、借金も含めてすべてを引き継ぐことになってしまいますので要注意です。

一切の相続を行わないことは「相続放棄」と呼びます。
財産というよりも、厳密には相続人としての資格放棄を意味します。家庭裁判所にて手続きを行う必要があります。

差し引きプラスの財産のみ引き継ぐことは「限定承認」と呼びます。
この方法を選択するには共同相続人全員で共にする必要があります。しかし被相続人が事業主である場合や、会社経営者として事業に関連して連帯保証人になっている場合などには、有効な手段となり得ます。
限定承認をすべきか単純承認すべきかどうかは、専門家に相談するなどして慎重に判断しましょう。

相続人間で遺産分割協議を行う

相続放棄以外を選択した場合、遺言がなく相続人が複数いる場合には、相続人間で、誰に何を分配していくのかを話し合って決めていきます。
これを「遺産分割協議」と言い、全員の合意を持ってその内容を成立させます。また、合意の成立後は遺産分割協議書を作成します。

各人の引き継ぐ財産が確定すれば、各々相続税の申告を行いましょう。常に必要になるわけではありませんが、数千万円程度の遺産がある場合には申告義務が課される可能性が出てきます。相続開始を知ってから10ヶ月以内の申告義務を負いますので、スピーディに、かつ正確に納税額の計算をしなければなりません。

相続財産に不動産が含まれている場合の手続き

遺産分割をする場合、相続財産が現金のみであれば分割も非常に簡単です。
しかし現金ほど価値の評価が単純でないケースもあります。この観点からよく問題になるのが不動産です。

不動産を相続する場合、いくつかの手続きパターンがあります。以下でそれぞれの内容を挙げていきます。

共有分割の手続きについて

概念としては単純で、公平な分割ができる手続きとして「共有分割」があります。 相続人が共有で土地などを保有するのです。

しかし共有分割には大きな問題があります。
共有関係に立ってしまうことにより、各々が自由に処分できなくなるということです。保存や管理行為に関しては単独でできるのですが、建て替えや改築といった「変更」行為には全員の同意が必要です。
親子・兄弟のようにトラブルになる懸念が小さい場合は共有でも構いませんが、将来的に揉める可能性が高いため、特段の事情がなければ共有分割は避けた方が良いでしょう。

現物分割の手続きについて

不動産などの相続財産をモノ単位でそのまま相続、または一定範囲で区切って現物のまま相続する「現物分割」という方法もあります。
例えば「現金はAが、動産はBが、不動産はCが相続」といった分け方や、「土地を分筆して、隣り合う別の土地としてそれぞれに所有」するといった分け方が現物分割にあたります。
この場合、手続きが比較的簡単ですが、不公平になりやすいという課題があります。

換価分割の手続きについて

不動産を売却し、お金に変えて各々に分割する「換価分割」という方法もあります。
この場合、公平に分けることができますし、不動産の管理なども行う必要がなくなるというメリットが得られます。
亡くなった方の名義のままでは売れないので、いったん共同相続登記を入れてから売ることになりますが、売却は共有物の処分に当たるので共同相続人全員の同意のもとで売却することになります。

代償分割の手続きについて

誰かが現物で相続し、他の者に対して現金等を支払って調整する分割方法「代償分割」もあります。
例えば、「家はそのまま残したいが共有や分割はしたくない。しかしながら、家以外に大きな財産はない」といった状況では換価分割はできませんし、現物分割したのでは極端な不公平が生じます。

そこで価額を評価し、家を取得した者が現金を支払って不公平を是正する分割方法が代償分割です。
手続きはそれほど複雑にはなりませんし、多様なニーズにも柔軟に応えやすいというメリットが得られます。他方で、代償金を支払う者には大きな負担がかかってしまいます。
経済的価値全体から見れば財産が減るわけではないのですが、大金を支払うことになりますので、手持ちのお金が十分になければ難しいでしょう。

所有権移転登記を行う

いずれかの方法により不動産を取得した場合、当該不動産につき所有権移転登記(相続登記)を行わなければなりません。相続登記はまだ義務化されていませんが、近いうちに義務化され、相続登記をしないと処罰されることになります。
登記により権利関係を明瞭にしていなければ、将来的に所有権の所在などでまたトラブルが発生するリスクを負います。そこで登記について司法書士に依頼し、確実に手続きを完了させましょう。

相続の手続きは各専門家に依頼がおすすめ

相続に際して多くの手続きをしなければなりません。比較的簡単で自分だけで済ませられることもあれば、面倒な手続き、複雑で内容が難しい手続きなどもあります。余計な問題を生じさせ、トラブルをこじらせないためにも、各種手続きはそれぞれの専門家に任せましょう。
相続税に関しては税理士に、登記に関する手続きは司法書士に、といった具合でプロに任せると安心して相続ができます。