大原司法書士事務所

成年後見制度申立て方法を解説!手続きの流れや申請の必要書類など紹介

成年後見制度申立て方法を解説!手続きの流れや申請の必要書類など紹介

カテゴリ:司法書士コラム

 

申立ての必要書類と費用

日本には「成年後見制度」というものがあり、判断能力に不安がある方や、将来自分が認知症になったときのことが心配という方には利用がおすすめできます。

ここではこの制度の利用を考える方に向けて、手続きの流れを解説していきます。どのような手順を踏むのか、どんな準備が必要なのか、整理していきましょう。

 

成年後見制度について

成年後見制度は、判断能力が十分でない方に対するサポート制度です。

例えば家を売ったり遺産分割をしたりといった大きな財産の移動を伴う行為をするのに不安を感じる方もいるかと思います。認知症などが原因で判断能力が落ちている場合が対象となりますが、同制度を活用することで「成年後見人」等が代わりに手続などをしてくれるようになります。

本人の判断能力に応じて区分が分かれ、「補助人」「保佐人」、そして「成年後見人」と段階的に設けられています。成年後見人がつくのはその程度が最も重いケースであり、判断能力を「欠いている」状況で選任されます。そのため補助人や保佐人と比べてもその権限は広いです。

成年後見人となった者は、本人の財産に関してあらゆる法律行為ができますし、本人も自らの法律行為につき取り消すことができるようになります。日常生活のちょっとした行為などは適用除外とされるなど、一部例外はありますが、安心して生活ができるようになるでしょう。

任意後見でも家庭裁判所への手続きを要する

成年後見人は、基本的に家庭裁判所に申立てをして選任してもらいます。

他方、任意後見というやり方もあります。本人があらかじめ任意後見契約を締結し、自身が認知症などによって判断能力を欠いたときに指定した者が任意後見人となるようにする方法です。

ただし、本人が契約したからといって自由に選任できるわけではありません。いずれにしろ家庭裁判所による選任を受けなければその契約の効力は生じないのです。

そこで、任意後見・法定後見いずれの場合でも、次の流れに沿って、家庭裁判所への申立てをしなければなりません。

 

成年後見の申立て手続き

成年後見の申立ては、家庭裁判所または郵送にて行います。概略としては、いずれかの方法で申立てを行い、場合によっては調査等を受け、その後審判を受けると同時に選任をしてもらうという流れです。

各手続きの詳細や注意点を見ていきましょう。

専門家への相談

申立てに先立って、まずは、成年後見制度については司法書士などの専門家、あるいは市区町村に設けられている地域包括支援センターなどに相談ができることを知っておきましょう。他にも民間団体が支援していることもありますので、スムーズに手続きを進めるためにも相談しておくことをおすすめします。

なお、手続の案内に関しては家庭裁判所で説明を受けることも可能です。後見開始をするにはどんな手順を踏むのか、申立てに必要な書類の説明、説明用のDVDを視聴することもできます。

ご自身の財産を守る重要な制度ですので、しっかりと理解してから進めるようにしましょう。

申立て

申立ては本人の住民票記載の住所地または実際の居住場所を管轄する家庭裁判所にて行います。なお、申立てができるのは本人に限られません。配偶者や、4親等内の親族であれば申立てが可能です。そのため、例えば本人の親や子はもちろん、孫や甥・姪、配偶者の兄弟姉妹までも申立て可能です。

なお、一度申立てをした場合、簡単にこれを取り下げることはできません。家庭裁判所の許可が必要です。

特に注意が必要なのは、「自分や推薦する者を選任してもらえなさそうだから取り下げる」といったことができないということです。

申立てに際しては、本人が何らかの援助を必要としていることを証する医師の診断書を作成してもらう必要があります。場合によっては「鑑定」が必要となることもあります。

調査

申立てに際して、裁判所から事情が尋ねられることがあります。

成年後見制度は本人を保護するために本人から法律行為の権限を奪って成年後見人等に与えるという側面があり、 成年後見人等が与えられた権限を濫用しないよう未然に防止するため、慎重に取り扱わなければならないからです。

審判

後見の開始の審判と同時に成年後見人が選任されます。

上述の通り、申立人が求める人物が選任されるとは限りません。家庭裁判所が、本人にとって最適と思われる者を選ぶのです。そのため、本人の財産状況によっては特別の知識を有する者があたることもあります。例えば弁護士、司法書士や社会福祉士などです。

その判断に関しては不服申立てができませんので注意しましょう。

なお、成年後見人はその後親族や本人と面談をするなどして、生活状況を把握したり、銀行等へ届出をしたりして財産目録や収支予定表などを作成することになります。成年後見は登記事項ですし、銀行への届出の際には登記事項証明書の提出を求められることもあるでしょう。だ、はじめの登記は法定後見なら家庭裁判所が、任意後見なら公証人が行うため、成年被後見人や成年後見人が手続きを行う必要はありません。

 

申立ての必要書類と費用

申立てには、以下の書類が必要です。

  • 申立書
  • 申立事情説明書
  • 本人の意見書 ※本人による申立ではない場合
  • 成年後見用に作成した診断書
  • 登記されていないことの証明書
  • 本人情報シート
  • 親族関係図
  • 親族の意見書
  • 後見人等候補者事情説明書
  • 財産目録
  • 収支予定表

申立書や診断書については、専用の用紙が裁判所のWebサイトや家庭裁判所で直接手に入れることができます。

また、申立てには手数料や諸費用が必要となります。内容は、申立て手数料の800円(収入印紙)、登記嘱託手数料の2,600円(収入印紙)、戸籍や住民票の取得費用、医師の診断書の取得費用、郵便切手代等です。

この他に、鑑定を要すると言われた場合には別途医師に鑑定をしてもらうための鑑定料が求められます。これはケースバイケースですが、経済的に困窮しているなどの事情がある場合には助成をしてもらえる可能性があります。

また、資産に不動産がある場合には固定資産税評価証明書や登記事項証明書の取得費用がかかります。

 

成年後見制度には弱者救済の目的があるため、裁判所もできるだけ手続のハードルを下げようとしていますが、一方で成年後見制度が本人の権利を制限するという性質があるので、どうしても様々な書類の作成が必要になります。

日頃裁判所なんかに縁のない一般の方が一人で準備するには、やや荷が重いと感じられる方も多いと思われます。

疑問点や不安を感じている方は一度専門家を訪ね、制度や手続書類のことを聞いてみると良いでしょう。