大原司法書士事務所

相続財産の調査方法とその手順について! 各種書類請求や専門家への依頼費用についても紹介

相続財産の調査方法とその手順について! 各種書類請求や専門家への依頼費用についても紹介

カテゴリ:司法書士コラム

遺産分割をするためには、分割対象となる相続財産の内容が明らかになっていなければなりません。そこで相続開始後の相続人は、“相続財産の調査”を進めていくことになります。
どのような方法で調査を行うのか、財産の種類別に説明し、その際にかかる費用についても言及していきます。

 

相続財産別の調査方法と手順

預貯金、不動産、有価証券、借金について、調査方法の手順を示していきます。

 

預貯金の調査について

相続開始後、被相続人の預貯金を調査するため、以下の手順に沿って手続を進めていきましょう。

1. 被相続人の遺留品や書類を捜索する
被相続人の自宅を調べて、遺留品、書類をくまなくチェックしていく。通帳、キャッシュカード、預金通知書などから情報を収集していく。ネットバンキング、クレジットカードの利用履歴からも預貯金情報が分かることもある。

2. 取引のあった金融機関に問い合わせる
収集された情報を頼りに、被相続人の口座がある銀行や信用金庫等の金融機関に問い合わせを行う。ただし誰でも個人の情報を引き出せるわけではない。そこで相続人であることを証明する次のような書類を求められることがある。

  • 本人確認書類(運転免許証、パスポートなど)
  • 戸籍謄本(被相続人の死亡を証明するもの)
  • 印鑑証明書

3. 残高証明書の請求
金融機関に対して、当該口座にどれだけ残高が残っているのかを証明する「残高証明書」の発行を請求する。

4. 取引明細書の請求
残高証明書により、当該口座の残高自体は把握できるが、その他の財産についても調査を進めるため、「取引明細書」についても発行を請求する。取引明細書から、預貯金とは別の財産が発覚するケースもある。例えば後述の借金などは口座からの引き落とし情報から見つけられる。

5. 他の金融機関についても同様に調査を行う
被相続人が持つ口座は1つとは限らない。他の金融機関にも同様の手順で調査を進めていく。

 

不動産の調査について

不動産は1つあたりの評価額が他の財産より比較的大きいため、1つでも確認漏れがあると遺産分割や相続税申告に大きな影響を与えます。そのため土地や家屋等についてもしっかりと調査を進めていくようにしましょう。

1. 被相続人の自宅から固定資産税納税通知書や権利証などを捜索する
固定資産税納税通知書や不動産に関する「権利証」がないか、被相続人の自宅を捜索する。固定資産税納税通知書は未登記物件(特に建物)についても通知されるのでまずこれを探す。権利証(または登記識別情報)とは、不動産の所有権移転登記や所有権保存登記が完了したことを示す書類で、「登記済権利証」と呼ばれることもある。この権利証が見つかれば、そこから物件の地番や家屋番号などが把握できる。もしくは被相続人の所有物と思われていた物件が、他人所有であったとそこで気づけるかもしれない。
権利証が見つからないときは「固定資産税の納付書」を探す。(トル)

2. 自宅の捜索で有益な情報が見つからないときは「名寄帳」の発行を請求
名寄帳は、市町村役場で取得できる。これは市区町村単位で、そのエリア内にある不動産を調べるために役立つ。エリア外の不動産については調べられない。

3. 不動産の固定資産評価証明書を取得
被相続人が所有していた土地や建物が分かれば、当該物件の所在地の市町村役場にて、「固定資産評価証明書」を取得する。これにより不動産の評価額の目安が分かる。

 

有価証券の調査について

有価証券についても、金融機関との取引により管理されていることが多いため、基本的には預貯金を調査するときと同様の流れで調査を進めます。

1. 被相続人の遺留品や書類を捜索する
まずは被相続人の自宅の捜索から始める。株式や投資信託、債券などの証券に関する書類がないか、チェックしていく。証券会社からの取引報告書、口座開設書類、投資信託の資料、株主優待券などが手がかりとなる。

2. 証券保管振替機構への開示請求
口座が特定できない場合、証券保管振替機構に対して開示請求を行う。上場株式の場合は、この請求により口座の開設先が調べられる。

3. 取引のあった証券会社に問い合わせる
収集した情報を元に口座が作られている証券会社に問い合わせを行う。取引内容、保有残高などを調べる。ただし、口座の存在や残高の確認をする際、相続人であることを証明する資料の提出が必要。

4. 他の証券会社についても同様に調査を行う
複数の証券会社を利用している可能性もあるため、同様の手続を繰り返して調査を進める必要がある。

上場株式の場合、証券保管振替機構や証券会社への照会などにより調査を進められますが、非上場株式だと同じ調査方法では調べられません。証券会社や証券保管振替機構が株主を管理していないからです。
そのため当該株式を発行した株式会社に直接問い合わせる必要があります。株主総会招集通知、株券、配当金の支払通知書等を頼りに発行会社を調べましょう。

 

借金の調査について

借金などの負債も相続の対象です。そのため「被相続人が借金をしていたのかどうか」、「残債はいくらか」「債権者は誰なのか」といった情報もしっかりと調査しておく必要があります。

1. 被相続人の遺留品や書類を捜索する
まずは被相続人の自宅の捜索。遺留品や書類の中に借金に関する情報がないかを調べる。金銭消費貸借契約、明細書などが手がかりになる。

2. 債権者がわからないときは信用情報の開示請求を行う
債権者が個人でない場合でも、次の機構に対して信用情報の開示を求めることで借り入れ情報が把握できることがある。
(ア) JICC(株式会社日本信用情報機構)
(イ) CIC(株式会社シー・アイ・シー)
(ウ) KSC(全国銀行個人信用情報センター)

3. 債権者への問い合わせ
債権者情報が明らかになれば、銀行やクレジットカード会社、消費者金融などの債権者に問い合わせを行う。

4. 残高証明書の請求
債権者から残高証明書を発行してもらい、借金の存在および残高を把握する。正確に情報を把握するため、取引明細書も発行してもらう。

5. 他の債権者についても同様に調査を行う
複数の事業者、あるいは個人から借金をしている可能性があるため、同様の手続きを繰り返して調査を進めていく。

 

相続財産の調査にかかる費用

相続財産の調査に伴って費用が発生します。書類の発行を請求するときの手数料が主な費用です。

調査内容

費用

自宅の捜索

・0円

・相続財産の基本的な調査方法

・自分で行う限り費用はかからない

金融機関に対する
残高証明書の発行請求

・1通あたり1,000円弱

・手数料として費用が発生する

・金額は金融機関によって異なる

金融機関に対する
取引明細書の発行請求

・1通あたり数百円ほど

・金額は金融機関によって異なる

信用情報の開示請求

・1,000円ほど

・費用や請求方法は機構により異なる

戸籍謄本の取得

・1通あたり450円

・除籍謄本と改製原戸籍謄本は1通あたり750円

・請求を郵送で行うか窓口で行うかでトータルの費用は異なる

印鑑証明書の取得

・1通あたり数百円ほど

・地域によって異なる場合がある

名寄帳の取得

・1通あたり200円~300円ほど

・地域によって異なる場合がある

各種書類の発行請求等を行う場合、それぞれの費用は大きな問題とはなりません。その反面、調査のたびに手続を行わなければならない手間が大きくなってしまいます。
また、調査に漏れがあるときは後々大きなトラブルに発展するリスクもあります。そこで相続財産の調査は専門家に依頼するのが一般的です。このときの費用は依頼先の専門家により異なります。おおむね20万円~30万円ほどが相場といわれていますが、詳しくは依頼を検討する専門家に直接聞く必要があります。

相続人間で揉める可能性が高いときには弁護士に、大きなトラブルなく相続手続を進められそうなときや不動産が財産に含まれているときは司法書士などに依頼することが多いです。

 

相続財産の調査後は財産目録も作成しよう

相続財産の調査が進み、財産の内容、そしてそれぞれの評価額も整理できれば、それらの情報を「財産目録」としてまとめていきましょう。

被相続人が持っていた現金、預貯金、不動産、有価証券、借金、その他自動車や家財などの動産についてもすべて記入していきます。

財産目録は、作成が法的に義務付けられているものではありません。しかし作成ができていると、その後の遺産分割協議などの相続手続で役に立ちます。専門家を利用する際は財産目録についても作成を依頼しておくと良いでしょう。