大原司法書士事務所

任意後見制度の手続について! 任意後見を開始するまでの流れや費用・報酬について解説

任意後見制度の手続について! 任意後見を開始するまでの流れや費用・報酬について解説

カテゴリ:司法書士コラム

本人の判断能力が衰えたとき、法的な支援を行う人物として後見人と呼ばれる人物を選任することができます。ただしこの成年後見制度は公的な仕組みであり、後見人のする行為が有効となるには所定の手続を行う必要があります。
また成年後見制度にも2種類あり、本人が事前に契約を結ぶことで効力が生じるタイプを「任意後見制度」と呼びます。この記事では任意後見制度を利用するための手続を解説し、手続にかかる費用についても紹介していきます。

 

任意後見制度とは

契約などの法律行為を行うには、判断能力が備わっている必要があります。これは日本の法律で求められていることであり、自分でしている行為がどのような意味を持つのかを理解できないときには、その行為が法的に意味を持たないことがあります。

しかし判断能力を失ってしまった、あるいは不十分になってしまった方は、生きていくために必要なさまざまな行為に制限がかけられてしまいます。その弊害を防ぐとともに、行為に制限をかけられた方を支援するための制度が成年後見制度です。

「後見人」は支援役として選任され、本人の代わりに契約を結んだりします。

ただ、成年後見制度には①法定後見制度と②任意後見制度の2種類があります。
①は判断能力が不十分になった後で、裁判所に申し立てて後見人等を選任してもらう手続です。一方、②は、本人が将来に備えてあらかじめ後見人になってくれる人を用意する手続です。

事前に備えておくことで、判断能力を失ってから急いで対応する必要がなくなりますし、本人としても信頼できる人物に後見人なってもらえるため安心できます。また、任意後見制度は本人のする契約を基礎に運用されますので、具体的にどのようなサポートを行うのかを契約内容に定めることができます。

 

任意後見制度の手続の流れ

任意後見制度を利用するには、任意後見人になってくれる人を探し、その方と任意後見契約を締結。そして契約内容を公正証書として書面に残しておきます。

その後判断能力が不十分になったタイミングで、裁判所に任意後見監督人を選任してもらい、その選任がされた後に任意後見が開始されます。

 

任意後見人の選定

まずは任意後見人となる人物を探します。信頼できる人物、そして契約締結などの重要な行為を問題なく遂行できる人物を選ぶ必要があります。

特別な資格は必要ありませんので、家族や親族、友人を指定することも可能です。あるいは、弁護士や司法書士といった専門家に依頼してなってもらうことも可能です。

なお、この時点ではまだ任意後見人ではなく「任意後見受任者」と呼ばれます。

 

任意後見契約の締結

続いて、任意後見の契約内容を検討していきます。

入所を希望する施設、かかりつけの病院、その他生活に関する具体的な要望や金額に関することもまとめておきましょう。そのために必要な行為の代理権を与えることができます。

病歴などの情報もまとめておくと、その後の任意後見がスムーズになります。

なお、身の回りの世話、例えば介護行為などは任意後見契約の範疇ではないため別途準委任契約として締結する必要があります。

 

任意後見契約の公正証書作成

ほとんどの契約は、口約束でも成立します。

しかし任意後見契約については契約書を書面で作成すること、それも公正証書として作成することが求められています。

そのため当事者間で契約書を作成しただけでは足りず、交渉役場にアポを取って、公証人に依頼して公正証書を作成してもらいましょう。

 

任意後見監督人選任の申立

本人が判断能力を失った・衰えたという場合、家庭裁判所に「任意後見監督人」の選任を求めることになります。

任意後見監督人とは、その名の通り任意後見を監督する人物のことです。任意後見の場合、後見人を裁判所が指定していませんので、信頼性に問題があると捉えることもできます。そこで正しく後見が実施されているかどうかを監督する必要があり、そのために必ず任意後見監督人が選任されるのです。
法定後見制度では必須ではありませんが、任意後見制度では監督人は必須です。

そしてこの監督人が選任されなければ、任意後見契約の効力は生じません。

なお、申立ができるのは次の人物です。

  • 配偶者
  • 4親等内の親族
  • 任意後見受任者

本人の住所地にある家庭裁判所に対して、「申立書」と添付書類を提出します。
添付書類には、「本人の戸籍謄本(全部事項証明書)」や「任意後見契約公正証書の写し」などが必要です。

 

任意後見監督人の選任と任意後見の開始

任意後見監督人が選任されると、契約の効力が生じ、それ以降任意後見受任者は「任意後見人」となります。

そして本人を交わした契約内容に従い、任意後見を開始します。

 

任意後見制度の利用で必要な費用・報酬

任意後見制度を利用するには費用がかかります。

後見開始までにも費用がかかりますし、後見開始後も費用がかかることは覚悟しておく必要があるでしょう。

まず後見開始までの費用ですが、これは主に公正証書を作成するための費用です。その他次の通り、印紙代や登記嘱託料なども発生します。

  • 公正証書の作成手数料:11,000円
  • 法務局に納める印紙代:2,600円
  • 法務局への登記嘱託料:1,400円
  • 書留郵便料:約540円
  • 正本謄本の作成手数料:1枚あたり250円

また、契約内容を検討したりする際、専門家の力を借りることがあります。その際は、司法書士などに対する依頼料が発生します。依頼先や依頼する範囲にもよりますが、10万円以上になることが多いです。

後見開始後の費用としては、後見人や監督人に対する報酬があります。
月々で報酬を設定することが多く、それぞれ3~5万円ほどかかることが多いです。