相続人の連絡先がわからないときの調査方法と適切な対応について
カテゴリ:司法書士コラム
相続が始まっても、相続人の住所や連絡先がわからず手続きが進められないことがあります。このときどう対応する必要があるのでしょうか。
戸籍をたどって住所を調査する方法から、それでも見つからない場合や連絡を無視される場合の手続きまで、はじめての方にもわかりやすく解説します。
まずは戸籍から相続人の範囲を確定させる
最初に行うべき作業は、被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍を取得し、法律上の相続人が誰なのかを確定させることです。
戸籍謄本とは、その人が生まれてから現在(または死亡)までの家族関係を記録した公的な書類です。本籍地を何度も変えていたり婚姻・離婚を経ていたりすると、このフェーズだけでも多くの時間がかかってしまうでしょう。
長年会っていない兄弟姉妹や離婚した配偶者との間の子どもなど、知らなかった関係者の存在が判明することも珍しくありません。
戸籍の附票を使って現在の住所を調べる
相続人が誰であるかがわかっても、連絡先までは戸籍謄本だけで判明しません。
ここで活用できるのが「戸籍の附票」という書類です。戸籍の附票には、その戸籍が作られてから現在(または除籍されるまで)の間の住民票上の住所が記録されており、対象者の現在の住所を確認する手がかりになります。
相続人の附票を取得するための条件
もう一点注意したいのが、相続人自身の戸籍の附票を誰でも自由に取得できるわけではないということです。
附票を請求できるのは原則として本人やその配偶者、直系尊属・直系卑属(父母や子など)であり、それ以外の人が取得する場合は「第三者請求」という形になります。
兄弟姉妹など請求する人と対象者が直系の関係にない場合は、相続手続きのために必要であることを示す請求理由と相続関係がわかる戸籍などの資料を提出しなくてはなりません。
これは対象者の個人情報を守るための仕組みであり、単に「相続人だから」という理由だけで簡単に取得できるものではない点に注意しましょう。
連絡しても返信がないときの対応
戸籍の附票などから住所が判明しても、「そこに手紙を送っても返事がない」、あるいは「無視されている」という状況に困ることも珍しくありません。
住所が判明していてそこに実際に住んでいると考えられる場合には、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることを検討すると良いでしょう。
調停でも相手が出席せず話し合いがまとまらない場合は調停が不成立となり、審判という手続きに移って裁判所が分割方法を決定することになります。
所在がわからないときは不在者財産管理人制度を利用
戸籍や附票をたどっても住所が判明しないケースや、判明した住所に送った郵便が「宛所不明」で返送されてくるなど実際にその場所に住んでいないと考えられるケースもあるでしょう。
このように、従来の住所や居所を去り、容易に戻る見込みがないと判断される人を「不在者」と呼びます。
この状況では不在者財産管理人の制度を利用することを検討します。
不在者財産管理人の選任を申し立てる
相続人が不在者にあたる場合には、家裁に対して「不在者財産管理人」の選任を申し立てることができます。
ほかの相続人などの利害関係人が、不在者の住所地や居所を管轄とする家裁に申立てを行い、選任された管理人が不在者に代わって財産を管理します。
申立てにあたっては、不在者の戸籍謄本や戸籍の附票、返送された郵便物や行方不明者届の受理証明書といった不在の事実を示す資料、不在者の財産に関する資料などを準備する必要があります。
なお、選任された不在者財産管理人は選任されただけでただちに遺産分割協議に参加できるわけではなく、家裁の権限外行為許可を得たうえで協議に加わります。
早めの調査と専門家への相談が円滑な相続につながる
相続人の中に連絡先の分からない人がいる状態を放置していると、不動産の売却や預貯金の解約といった相続手続き全体が長期間にわたって進まなくなるおそれがあります。
戸籍の収集や附票の請求は自分で行うことも可能ですが、転籍を重ねている場合や相続人の数が多い場合には、必要な書類をそろえるだけでもかなりの時間がかかってしまうでしょう。
また、第三者請求としての取得手続きや調停・不在者財産管理人といった裁判所手続きは、法律や実務の知識がないと対応が難しいです。そこで早い段階で司法書士等の専門家にご相談いただき、状況に応じた調査方法や必要な手続きを確認しながら進めていきましょう。
