大原司法書士事務所

成年後見制度を利用するための費用とは?法定後見・任意後見の費用や後見人への報酬など

成年後見制度を利用するための費用とは?法定後見・任意後見の費用や後見人への報酬など

カテゴリ:司法書士コラム

成年後見制度とは、本人の判断能力に不安がある場合に、本人のサポートをする制度です。後見人と呼ばれる人物がサポートに入り、契約締結や財産管理に関する行為を手助けするのです。ただ、同制度を利用するにあたり費用が発生します。
そこで「どれほど費用がかかるのか」「どのような費目があるのか」といったことを以下にまとめていきます。

法定後見制度の申立段階で必要な費用

成年後見制度は大別して「法定後見制度」と「任意後見制度」の2つがあるのですが、まずは法定後見制度の利用でかかる費用について見ていきましょう。

  1. 裁判所に対して支払う費用
    費用の内容と額は以下の通りです。
    • 申立手数料:800円
      (保佐で代理権・同意権付与の場合は1699円、補助で代理権・同意権付与の場合2400円)
    • 登記手数料:2,600円
    • 郵便切手代:数千円ほど
      家庭裁判所によって異なるため、具体的な額に関しては申し立て先の家庭裁判所にて確認が必要
  2. 戸籍・住民票など役所に支払う費用
    戸籍450円、住民票300円ですが、被後見人、申立人、後見人候補者など複数人の資料が必要な場合があります。

  3. 法務局に支払う費用
    「登記されていないことの証明書」取得のための手数料を要します。

  4. 医師の診断書取得費用
    5000円から10000円程度かかります。

  5. 財産に不動産が含まれる場合、登記事項証明書や固定資産税証明書の取得費用がかかります。

  6. 鑑定費用
    ごくまれに、裁判所がご本人の病状に疑義を持つ場合、医師の鑑定が求められる場合があり、 10万円以上の鑑定費用が必要になることがあります。

任意後見制度の契約で必要な費用

本人が将来の判断能力低下等を懸念し、自ら後見人を指定する後見制度が任意後見制度です。そのため家庭裁判所での手続の前に、本人が後見人候補者との間で任意後見契約の締結をしなければなりません。
そしてこのことに関連して「公正証書作成費用」が発生します。契約書を公正証書化しなければならないからです。この点、手続面・費用面の双方における法定後見制度との大きな違いとも言えます。

費用の内容と額は以下の通りです。

  • 公正証書作成にかかる費用
    • 基本手数料:11,000円
    •  登記嘱託手数料:1,400円
    •  印紙代:2,600円

この段階では、ご本人にはまだ判断能力がありますが、判断能力が低下した場合には、後見監督人の選任を申し立てる必要があります。この場合の費用は、法定後見制度申立の場合と同様です。

成年後見制度の費用に関する注意点

最低限必要な費用は上記の通りですが、実際のところ、他にも考慮すべき費用がいくつかあります。成年後見制度利用にあたっては以下の内容にも注意しましょう。

専門家への相談料・依頼料の考慮

成年後見制度に関する手続を、法律に精通していない方が独力で進めていくのは大変ですしリスクも伴います。
そこで専門家に相談したり手続進行を依頼したりするのが一般的です。代行してもらうことが制度上の要件になっているわけではありませんが、適切かつ安全な後見を始めるために大切なことです。

そこで、費用の大きさを考える上では上記手数料のみを考慮するのではなく、専門家との相談や依頼にかかる費用についても考慮しておくことが望ましいです。
具体的な金額は依頼する専門家によっても異なりますので、Webサイトを確認したり直接聞いたりして事前に明確化しておきましょう。なお相場としては、10万円以上かかると言われています。申立手数料などと比べると大きな費用に見えますが、将来生じ得るリスクと比して考えることが大切です。

専門職後見人への報酬の考慮

成年後見制度は、いったん申し立てを行い後見が開始されても、費用の負担が終わるわけではありません。その後長期に渡って後見人が本人をサポートするという仕事を行うのであり、専門職が後見人についた場合には後見人に対する報酬を支払う必要があります。

裁判所が示す基本報酬は、一般的に本人の財産の大きさに応じて下表のようになっていますが、通常の場合何らかの申立動機があって後見が開始されるので、基本報酬だけで済むことは稀です。その意味では、できるだけ親族を後見人候補者として申立て、専門職後見人への報酬支払いを避けるのが賢明と言えます。

 

本人の財産の大きさ基本報酬
1000万円以下2万円/月
1000万円超、5,000万円以下3,4万円/月
5,000万円超5,6万円/月

※その他特別の事情に応じて、基本報酬の50%の範囲で付加報酬が加わることもある

任意後見の場合、親族を後見人として報酬をなくすことも不可能ではありませんが、後見監督人が選任されるとその報酬支払いが必要となります。費用面も考え、どのように成年後見制度を利用するのか慎重に検討しましょう。

なお、専門職後見人への報酬については市町村で補助金制度を設けています。補助の要件などは市町村の窓口に相談して見るといいでしょう。