大原司法書士事務所

後見人の種類を解説! 後見人別の権限や選任される条件、後見監督人についても紹介

後見人の種類を解説! 後見人別の権限や選任される条件、後見監督人についても紹介

カテゴリ:司法書士コラム

知的障害・精神障害、認知症などにより判断能力が十分でなくなることがあります。その本人を保護することを目的とした制度が後見制度で、この制度に基づき本人を支援する立場として選任されるのが「後見人」です。
後見人にもいくつかの種類があり、それぞれに選任される場面や付与される権限も異なっています。ここでこの後見人の種類について整理をしていきましょう。

法定後見制度に基づく後見人の種類

「法定後見制度」とは、本人の判断能力に不安を感じたとき、家庭裁判所に審判の申し立てをすることで利用ができる制度です。本人の状態に応じて選任される後見人の種類が異なることや、事後的に申し立てを行う点で後述する任意後見との違いがあると言えます。

成年後見人

判断能力を欠いている方に対しては、「成年後見人」と呼ばれる人物が選任されて本人を支援していくことになります。
このとき、支援される本人のことは「成年被後見人」と呼びます。

本人や配偶者、4親等内の親族、検察官、市町村長がその申し立てをすることができます。

成年後見人が選任される場面では本人に判断能力がないことから、成年後見人に対し財産についてのすべての法律行為を代わりに行うことができる権限が与えられています。

本人のするすべての行為に支援が必要な場面で成年後見人は選任されるのです。

保佐人

判断能力を欠くにまでは至っていないものの、著しく不十分であると評価される方に対しては、「保佐人」と呼ばれる人物を選任して支援をすることになります。
このとき、支援される本人のことを「被保佐人」と呼びます。

本人や配偶者、4親等内の親族、検察官、市町村長がその申し立てをすることができる点は成年後見と同様ですが、保佐人を選任して“代理権を与える審判をする場合”には、本人の同意が必要とされます。
また、その代理権の内容も限定的です。というのも申し立てにあたり“裁判所が審判で定めた特定の行為”のみが代理権の範囲となるからです。特に内容を定めることなく広範に代理が認められる成年後見とは大きな違いです。

なお保佐開始後、所定の行為については、本人は保佐人の同意を得ることが必要となります。
「元本の領収」「保証」「不動産取引」「訴訟行為」「贈与」「相続放棄」など、民法第13条第1項に規定されている行為についてはすべて本人に制限がかかります。

そのため本人の行為をすべて代理するほどではないが重大な行為については広く支援する必要がある、という場面では保佐人を選任することになります。

補助人

判断能力が不十分と評価される方に対しては、「補助人」と呼ばれる人物を選任して支援をすることになります。
このとき、支援される本人のことを「被補助人」と呼びます。

本人や配偶者、4親等内の親族、検察官、市町村長が申し立てをできることや、代理権の付与に本人の同意が必要になる点でも保佐と同様です。
しかし保佐の場合、代理権に関する審判を行うときにのみ本人の同意が求められていたところ、補助に関しては“補助開始の審判”そのものに対しても本人の同意が求められています。
配偶者等であっても勝手に審判を申し立てることはできないのです。

被保佐人に制限がかけられていた民法第13条第1項所定の行為についても、申し立てをしなければ、本人は補助人の同意を得ることなく有効に行うことができます。

そのため、ごく限られた範囲で、特定の行為についてのみ支援をしたいという場面で補助人が選任されます。

未成年後見人

親などの親権者がいない子どもに対しては、「未成年後見人」と呼ばれる人物が選任されて支援をすることになります。
このとき、支援される子どものことを「未成年被後見人」と呼びます。

上の3種と異なり、子どもに対しては判断能力の程度問わず一律に支援する人物の存在が求められています。
通常は父母が親権を行使して本人を支援することになるのですが、父母が亡くなっていることや何らかの事情により不在であるケースもあります。このまま放置していると子どもが十分な教育を受けられない可能性がありますし、監護も受けられません。そこで親権者に代わって監護・教育・財産管理を行う人物として「未成年後見人」が選任されるのです。

未成年後見人には親権者と同等の権利・義務が付与され、本人を代理して法律行為を行うことになります。
ただ、子ども自身が十分な判断能力を有していることもありますので、一定の営業行為について単独で行うことができるよう、営業許可を与えることも認められています。

後見監督人

成年後見・保佐・補助のいずれについても、監督人を付けることが可能です。
各後見人のする事務が適当であるかを監督するために家庭裁判所から選任される人物のことです。

後見監督人については、家庭裁判所が必要と認めるときにこれを選任することができます。
選任された者は職務として後見人の事務内容をチェックし、その結果を定期的に裁判所に報告する義務を負います。

後見監督人は後見人の事務内容を見て評価するだけの知識を有している必要がありますので、多くの場合には弁護士や司法書士などの専門家から選ばれます。

任意後見制度に基づく後見人の種類

本人が、まだ判断能力が残っている段階で、将来の判断能力低下に備えて、あらかじめ契約により後見制度の利用を決めておくのが「任意後見」です。
本人が前もって利用を決断することや契約に基づく後見であること、その他本人が後見人を指定するといった特徴があります。

任意後見人

任意後見制度に基づき選任され、本人を支援する人物は「任意後見人」と呼ばれます。
あらかじめ本人と任意後見契約を締結し、どのようなことを代わりに行うのかをその契約で定めることになります。

ただし当事者間で契約を締結すればすぐに効力が生じるわけではありません。契約は公正証書によって結ばなければなりませんし、実際に判断能力が低下し家庭裁判所で監督人を選任してからでなければその効力が生じません。

任意後見監督人

任意後見制度における監督人は「任意後見監督人」と呼ばれます。
法定後見と異なり選任が必須とされています。
職務内容としては法定後見による監督人と大きな違いはありませんが、任意後見の性質上、本人の健常時の意思が優先されるので、監督人の職務は任意後見契約の遵守状況の監督が中心になります。