遺言書で1人に遺産を相続させたい!書き方や注意点を確認しておこう
カテゴリ:司法書士コラム
「遺産を1人だけに集中して渡したい」という想いは、遺言書を作ることで実現できます。ただ、遺言書の書き方を誤ると無効になってしまいますし、遺言内容が原因で親族間のトラブルが生じる可能性もあります。
「どう遺言を書けば遺産を1人に相続させられるのか」「トラブルを防ぐにはどういう書き方をするべきか」について、確認していきましょう。
遺言書で1人に遺産を渡せる
遺言書を使えば、法定相続人である配偶者や子に対して、遺産のすべてまたは一部を特定の1人に受け取ってもらえます。
ただし法律で定められた形式に則り作成することは必須で、法的な要件を満たせないと無効になってしまいます。
たとえば「自筆証書遺言」として有効に作成するには、全文・日付・氏名を自分の手で書くこと、そして押印することが求められています。
パソコンで作成してプリントアウトしたものは効力を発揮しませんのでご注意ください。
※財産目録については情報量も多くなるため、パソコンで作成したり通帳のコピーを添付したりして作っても問題ないが、財産目録各ページ(両面印刷ならその両面)に対して署名と押印が必要。
日付に関しても、「令和X年X月X日」(※西暦でもかまわない)のように年月日を具体的に特定できる形で記載しましょう。「吉日」といった文言を使うと特定ができないため無効となります。
1人に遺産を渡す遺言の残し方
遺産を1人に受け取ってもらうときの遺言の書き方・注意点についてご紹介します。
書き方はいろいろとありますし、ご自身の財産状況や家族構成によっても変わってきますので、実際に記載を進めていくときは司法書士等専門家へご相談ください。
子どものうち1人だけに残したいとき
文例は次のとおりです。
「遺言者は、下記の預貯金、不動産を含む、遺言者の有するすべての財産を、遺言者の長男○○○○(昭和○年○月○日生)に相続させる。」
不動産について言及するなら、法務局で取得できる登記事項証明書(登記簿謄本)に記載されたとおりに正確に書きましょう。住所ではなく、登記簿に記載された「所在」「地番」「地目」「地積」(土地の場合)や「所在」「家屋番号」「種類」「構造」「床面積」(建物の場合)を漏れなく記します。
預貯金については、金融機関名・支店名・口座の種類(普通預金・定期預金など)・口座番号を記載して口座を特定しましょう。
なお、子どもが複数いる状況で1人だけに全財産を相続させると、ほかの子から「遺留分侵害額請求」を受けるリスクがあります。そのためこのパターンでは遺留分に相当する財産をほかの子にも残すか、生前贈与を活用するなどの対策が推奨されます。
その他親族や第三者に残したいとき
法定相続人以外の孫や親族、あるいは知人などに財産を渡すときは、「相続させる」ではなく「遺贈する」という文言にします。
「遺言者は、すべての財産を、甥○○○○(昭和○年○月○日生)に遺贈する。」
そして遺贈の場合も法定相続人の遺留分は変わらないため、遺留分侵害額請求のリスクは残ります。この点に配慮し、また、手続きを円滑に進めるためにも「遺言執行者」を指定しておくことが推奨されます。
特に不動産の遺贈を行う場合、遺言執行者がいなければ名義変更の手続きを相続人全員と受遺者の共同で行わなければならず負担が大きいです。一方、遺言執行者が指定されていれば遺言執行者が必要な事務に対応してくれますので相続手続きをスムーズに進められるでしょう。
遺産を1人に集中させる場合の注意点
遺産を1人に集中させる遺言書は、ほかの法定相続人から不満が出やすく、また、遺留分権利者に対する侵害が生じる可能性も高いです。結果として相続人間の対立を招きやすいという特徴も持ちます。
そこで少なくとも「遺留分のリスク」については理解の上、対策を講じておくことをおすすめします。
※遺留分について |
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遺留分の割合は相続人の構成によって異なり、最大、遺産全体の1/2が遺留分として留保される。 遺留分の侵害自体違法ではなく遺言書も有効ではあるが、権利者から請求を受けると、金銭で侵害額を支払わないといけなくなる。 |
相続人からの不満に対処する上では、「付言事項への記述」もご検討ください。ご自身の気持ちなどを伝える記述欄のことで、淡々と誰に何を与えるかを記載するだけでなく付言事項に気持ちを記しておくと、納得も得やすくなります。誤解を防ぐのにも使えるでしょう。
同様の観点で、「生前からよく家族内で話し合って意向を伝えておくこと」も相続トラブル予防に効果的ですので取り組んでおくことをおすすめします。
