大原司法書士事務所

相続放棄した土地に固定資産税はかかる? 相続開始後の納税義務者について解説

相続放棄した土地に固定資産税はかかる? 相続開始後の納税義務者について解説

カテゴリ:司法書士コラム

遺産の取得により経済的利益が得られることもありますが、取得した資産によっては維持費が発生します。

特に土地を相続したときの「固定資産税」は毎年負担しないといけませんので注意が必要です。

一方、相続放棄をすれば遺産である土地は手放すことも可能ですし、相続人であっても土地を取得しない選択が取れることもあります。その場合固定資産税について一切考える必要がなくなるようにも思えますが、実際はそういうわけにもいきません。

相続開始後の固定資産税について、誰が納税義務者となるのか、特に相続放棄をした場合に着目して解説していきます。

 

土地を相続した方は固定資産税の納税義務者になる

土地や建物など、不動産を所有する方は当該資産について固定資産税の負担をしなければなりません。これは相続とは別の制度であり、購入や贈与を受けて取得した場合でも税負担が発生します。

税負担の大きさは、土地の場合「土地の評価額×標準税率1.4%」で算出されます。そのため評価額が1,000万円だとすれば、固定資産税として14万円の負担が発生します。

そして納税義務者は土地等の財産を所有している方です。よって、相続により土地を取得した方は、固定資産税の納税義務を負うこととなります。

相続人全員が負担するわけではない

相続人が固定資産税を負担しますが、複数人の相続人がいるときは常にその全員が税負担を負うわけではありません。遺産分割を行わないまま放置していると土地は共同相続人間で共有となり税負担もそれぞれが負うことになりますが、通常は遺産分割を実施します。

そして遺産分割協議等を経て土地の所有者が決まれば、その他の相続人については今後固定資産税を負担する必要はありません。

また、受遺者として土地を譲り受けた方は、相続人ではなくても土地の所有者になりますのでやはり固定資産税の納税義務者となります。

※受遺者:被相続人が作成した遺言書によって財産を取得する人物。

 

相続放棄をした方は原則固定資産税を負担しない

法律上、亡くなった方の配偶者や子どもなどは相続人になりますが、これは義務として強制されるものではありません。「相続放棄」をすることで相続人としての立場を捨てることができます。家庭裁判所に申し立てを行い、これが認められれば、相続人として承継するはずであった権利も義務もすべて放棄できます。

そのため被相続人が負債を多く抱えていた場合などでは相続放棄を検討するケースが多いです。遺産に土地が含まれているときも、相続放棄をすれば所有者にはならず、その結果、固定資産税の負担を負うことは基本的になくなります。

ただし、「土地だけを相続放棄する」ということはできません。土地だけを取得したくないのであれば遺産分割協議でその旨を話し合って決める必要があります。

固定資産税の滞納があっても負担しない

相続放棄では被相続人が持っていた権利・義務を捨てることができますので、被相続人が生前に固定資産税の滞納をしていたとしても、相続放棄をした方が納税の負担を負う必要はありません。

逆に相続人となった方は、土地を取得しなくても滞納分の税金については負担を負います。これは借金などの債務が残っている場合と同様です。

例外的に固定資産税の負担が発生するケース

相続放棄をしても、固定資産税の負担が発生するケースもありますので注意しましょう。

これは「相続放棄を行うタイミング」によります。

 

  • 相続開始のあった年内に相続放棄が完了した:固定資産税の支払い義務なし
  • 相続開始のあった翌年に相続放棄が完了した:固定資産税の支払い義務あり

 

固定資産税の納税義務者は、毎年1月1日時点で固定資産税課税台帳に登録されている財産の所有者です。登記簿上の名義人が亡くなっているときは相続人が所有者であると推定され、1月1日までに相続放棄が完了していないと、相続人(所有者)として登録をされてしまいます。そのため年をまたいで相続放棄をしたときは固定資産税の支払いが求められてしまうのです。

とはいえ、本来固定資産税の負担を負うべきは土地を取得する人物のはずです。そこで遺産分割により土地を取得する人物が定まれば、その方に対して固定資産税相当額の支払いを求めることができます。いったん立替払いをしておいて、その後請求を行えば良いでしょう。

相続放棄や不動産相続のこと、固定資産税のことなど、手続に不安があるという場合は専門家を積極的に利用しましょう。税理士など、不動産と税務に強い専門家を頼ればトラブルも起こりにくくなります。