相続手続きで後見人が必要になるケースに注意!遺産分割のために必要なこと
カテゴリ:司法書士コラム
相続人の1人が認知症であるなど、法的に有効な意思決定を自分自身で行えない場合には後見人が必要となります。遺産分割協議やその他相続手続きを有効に、問題なく進めるためにも、どのような場合に後見人の選任をしないといけないのか知っておきましょう。
相続で後見人制度が必要になるケース
遺産分割協議は、相続人全員が参加し、全員が合意することではじめて有効となります。
全員による合意は法律上の要請であり、一部の相続人を除外して行った協議は無効となります。そして「有効な合意」のためには、各当事者に意思能力が備わっていることが前提です。
意思能力とは「自分の行為の法的な意味や結果を理解できる能力」のことを指し、一般的には判断能力と呼ばれることもあります。つまり、もし判断能力を欠く状態にある方がいるのなら、その状態でなされた法律行為は無効となるのです。
相続人が判断能力を欠く常況にある
判断能力を欠く常況にある相続人がいるなら、家庭裁判所に申立てを行い、後見開始の審判を受けて成年後見人を選任してもらう必要があります。
成年後見人が包括的な法定代理権を持ち、相続に関する広範な手続きを本人に代わって行います。たとえば次のような行為です。
- 相続放棄や限定承認の申述
- 遺産分割協議での合意の意思表示
- 相続による不動産の名義変更(登記申請)
- 相続預金の解約や払戻し、金融資産の名義変更 など
なお、成年後見人には注意義務が課されており、本人(被後見人)にとって不当に不利な内容の遺産分割に合意した場合は後見人としての責任を問われる可能性があります。また、後見監督人が選任されている場合は、遺産分割協議に監督人の同意が必要になることもあります。
判断能力が著しく不十分な相続人がいる
法的に、判断能力が「著しく不十分」と評価される方がいるなら、保佐開始の審判を受けて保佐人を選任してもらう必要があります。
本人は原則として行為能力を有しており、日常的な行為は本人が単独で行うことができます。しかし、民法13条1項に列挙された特定の「重要な法律行為」については、保佐人の同意が必要となります。同意を欠いた行為は、取り消し得るものとなります。
相続手続きに関していえば、次のような行為が同意を必要とする行為にあたると解されています。
- 相続の承認・放棄
- 遺産分割協議
- 遺産分割の結果として行う不動産の名義変更や高額な預金の解約
保佐が必要なケースにおいてこれら重要な行為を要するときは、保佐人と連携しながら対応していかないといけません。なお、同意権に加えて代理権付与の審判を受ければ、保佐人が本人に代わって遺産分割協議に参加することも可能です。
重要な行為に対して不安のある相続人がいる
保佐を要するほどではない、判断能力が「不十分」な程度にとどまるケースでは、補助開始の審判を受けて補助人を選任してもらいましょう。
補助は三類型の中でも支援の程度が軽く、申立てにも本人の同意が必要とされています。
補助の仕組みにおいて重要なのは、「家庭裁判所が審判で指定した特定の法律行為についてのみ、補助人の同意権または代理権が付与される」という点です。
後見のように包括的に代理権が与えられるわけではなく、指定されていない行為は本人が単独で有効に行うことができます。
「補助を受けているから常に補助人が関与しなければならない」わけではなく、その方の補助の内容次第で判断が変わるということです。相続手続きに着手する前に、補助開始の審判の内容を確認することが重要です。
任意後見を利用していても別途後見人が必要なケース
将来の判断能力の低下に備えて、あらかじめ信頼できる人に財産管理などを委ねる「任意後見契約」を締結しているケースがあります。
しかし、任意後見人が持つ代理権の範囲は、あくまでも契約に定めた内容に限られます。
契約の中に遺産分割協議の代理権が含まれていないときは、任意後見人は遺産分割協議に代理人として参加することができません。この場合は別途、法定後見の申し立てを行い、後見人を選任してもらいましょう。
「特別代理人」が必要になるケース
後見制度を利用している状況でも、たとえば長男が後見人に選ばれ、その長男自身も同じ遺産の相続人であるというシチュエーションでは、後見人と本人の利益が対立してしまいます。
後見人による遺産分割協議への参加が「利益相反行為」に該当するときは、当該相続において本人を代理することができません。そこで、家庭裁判所に「特別代理人の選任」を申し立てる必要があります。特別代理人が遺産分割協議に参加しないと有効な遺産相続が実現できませんので、親族内で後見制度を利用しているときは後見人と本人の関係性についても注意しなくてはなりません。
