所有権移転登記に係る費用と必要書類とは|不動産の売買・贈与・相続による違い
カテゴリ:司法書士コラム
売買や贈与、相続によって不動産の所有権が移転したとき、不動産登記の手続きが必要となります。そのとき準備すべき費用(登録免許税)や必要書類をここにまとめましたのでチェックしておいてください。
不動産の所有者が変わるケース
土地や建物などの不動産については、所有権を持つ方が登記により公示されています。そこで所有者が変わったときには再度登記を行い、その変更についての登録を行う必要があるのです。
このときの手続きは所有者が変わった原因により多少異なるところ、不動産の所有者が変わるケースには大きく分けて①売買、②贈与、③相続の3パターンが挙げられます。
代金を支払って所有者である売手から購入するのが売買、無償で所有者である贈与者から受け取るのが贈与、所有者が亡くなったことをきっかけに相続人が受け継ぐのが相続です。
所有権移転登記にかかる費用(登録免許税)
登記をするときは法律で決められた登録免許税を納める必要があります。所有権の移転、所有権の保存、抵当権の設定、根抵当権の設定、配偶者居住権の設定など、登記申請を行う目的にもいろいろありますが、いずれの場合でも登録免許税の負担が発生します。
そして登録免許税の額は原則として次の算式に沿って計算されます。
登録免許税の額 = ①課税標準×②税率
この課税標準と税率については下記の通りです。
不動産の「課税標準」について
課税標準については、市町村役場で管理している「固定資産課税台帳の価格※」となります。
※一般的に「価格」や「評価額」と表記される金額を指しており、「固定資産税課税標準額」とは異なる。
※1,000円未満の端数は切り捨て。
この価格は、市町村役場から毎年送られてくる固定資産税課税明細書に記載されていますので、チェックしてみましょう。もし紛失しているときでも市町村役場にて証明書を発行してもらえますので、そこからチェック可能です。
また、もし固定資産課税台帳の価格がないときは「登記所が認定した価額」にて算定しますので、不動産の所在地を管轄する登記所に問い合わせましょう。
登録免許税の「税率」について
税率については所有権移転の原因によって異なります。
原因が売買契約にある場合、土地については1.5%(ただし2026年3月31日までの税率)、その他の不動産は2%です。
原因が贈与や財産分与にある場合は土地も建物も2%、相続による場合も土地と建物で同一の0.4%です。
所有権移転の原因 | 登録免許税の税率 | |
---|---|---|
売買 | 1.5%(土地) | 2%(その他の不動産) |
贈与・財産分与 | 2% | |
相続 | 0.4% |
税率が分かれば、登録免許税の額についても次のように計算することができます。
例1)固定資産課税台帳の価格が10,000,000円の土地を売買したときの所有権移転登記。
登録免許税の額 = 10,000,000円×1.5%
= 150,000円
例2)固定資産課税台帳の価格が2,125,500円の建物について贈与を受けたときの所有権移転登記。
登録免許税の額 = 2,125,000円×2%
= 42,500円
※課税標準は、1,000円未満の端数を切り捨てる。
※税額は、100円未満の端数を切り捨てる。
所有権移転登記に必要な書類
次に、所有権移転登記で準備すべき書類について紹介します。必要書類についても所有権が移転した原因により異なりますので分けて説明していきます。
なお、いずれの場合も「登記申請書」は作成が必須です。
売買の場合
売買の場合、一般的には次の書類が必要となります。
- 売主の権利証(以下のいずれか)
- 登記済証・・・法務局の「登記済」の印が押された売渡証書
- 登記識別情報・・・不動産の登記申請時に使うパスワードが記載された用紙
- 売主の印鑑登録証明書
- 発行から3ヶ月以内のもの
- 印鑑登録証明書に記載されている住所と登記簿上の住所が一致しているもの
- 買主の住民票
- 不動産の固定資産評価証明書原本
- 売買があったことを証明する書類
- 売買契約書
- 必要な情報をまとめた登記原因証明情報 など
登記申請は司法書士に対応してもらうのが一般的で、このときは委任したことを証明するため委任状が必要です。通常、司法書士が作成し、これに依頼主が署名捺印する形で完成させます。
贈与の場合
贈与においても、上記売買における所有権移転登記の場合と必要書類に大きな違いはありません。
- 贈与者の権利証(以下のいずれか)
- 登記済証・・・法務局の「登記済」の印が押された売渡証書
- 登記識別情報・・・不動産の登記申請時に使うパスワードが記載された用紙
- 贈与者の印鑑登録証明書
- 発行から3ヶ月以内のもの
- 印鑑登録証明書に記載されている住所と登記簿上の住所が一致しているもの
- 受贈者の住民票
- 不動産の固定資産評価証明書原本
- 贈与があったことを証明する書類
- 贈与契約書
- 必要な情報をまとめた登記原因証明情報 など
違うのは所有権移転の原因を証明する書類です。贈与があったことを証明する「贈与契約書」、あるいは登記で使う情報のみをまとめて作成する「登記原因証明情報」という書面を提出します。
相続の場合
相続の場合、売買や贈与と異なり不動産の元所有者が亡くなっていますので不動産を取得する相続人が必要書類をすべて準備しないといけません。また、相続開始をきっかけに取得するケースにも「法定相続分での取得」なのか、「遺産分割協議による取得」なのか、それとも「遺言書に従った取得」なのかによっても必要書類は異なります。
そこで必要書類は次のように分類して列挙することができます。
- 亡くなった方に関する書類
- 戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍
- 住民票の除票または戸籍の附票
- 不動産の固定資産評価証明書
- 相続人に関する書類
- 戸籍謄本
- 印鑑登録証明書
- 不動産の所有者となる方の住民票
- 相続関係説明図
- 不動産の取得を証明する書類
- (遺産分割協議により取得する場合)遺産分割協議書
- (遺言書に従い取得する場合)遺言書
必要書類を集めるのも一苦労です。困ったときは司法書士にご相談ください。