大原司法書士事務所

後見人になれる人・なれない人|選任の要件・欠格事由を解説

後見人になれる人・なれない人|選任の要件・欠格事由を解説

カテゴリ:司法書士コラム

成年後見人は、判断能力が衰えた方の財産管理や身上監護を担う重要な役職です。自分や家族が認知症になったときなどに「誰が後見人に選ばれるのか」「自分は後見人になれるのか」という疑問を持つこともあるでしょう。
そのような方に向けて当記事では、後見人はどうやって選ばれるのか、どんな人がなれないのかを解説していきます。

 

取得しないといけない資格はない

後見人になるために弁護士や司法書士といった国家資格を取得する必要はありません。

基本的に誰でも後見人になれる可能性を持ちます。そのため専門家でもない子どもが親の後見人になるケースもあれば、親族以外の第三者が選任されることもあります。

ただし後見人の職務は多岐にわたり責任も重大です。被後見人の預金を管理し、介護施設の契約手続きをし、医療に関する決定を支援するなど、その人の人生に大きく関わる判断を行わなければなりません。
形式上は特別な要件がないとはいえ、この職務を全うできる人物が選ばれるべきですし、それが本人のためになるといえるでしょう。

 

限定的に「後見人になれない人」が法定されている

後見人になるために必要な資格はありませんが、法律で定められた一定の事由に該当してしまうと後見人になれなくなってしまいます。

民法で定められた以下の事由を「後見人の欠格事由」と呼びます。

 

第八百四十七条 次に掲げる者は、後見人となることができない。
一 未成年者
二 家庭裁判所で免ぜられた法定代理人、保佐人又は補助人
三 破産者
四 被後見人に対して訴訟をし、又はした者並びにその配偶者及び直系血族
五 行方の知れない者

引用:e-Gov法令検索 民法第847条

 

もし、ある方が被後見人(支援対象者)の生活状況をよく理解しており財産管理の知識が豊富だとしても、これらの事由いずれか1つでも該当してしまうと選任されることはありません。

なぜ5つの欠格事由が定められているのか

法律でなぜ欠格事由が列挙されているのか、事由別にその理由について説明します。

 

後見人の各欠格事由

欠格の理由

18歳に満たない者

18歳未満の未成年者は法律上保護対象とされ、単独での法律行為ができない。
後見人には本人に代わって法律行為を行うことが求められるため、自身が親の監護下にある立場だとその役職が務まらない。

解任されたことのある法定代理人・保佐人・補助人

以前に後見人や保佐人、補助人として選任されながら裁判所から解任された経験がある者は、何らかの理由で職務を適切に遂行できなかったと考えられる。
横領・職務怠慢・利益相反行為など解任理由はさまざま考えられるが、再度選任するにはリスクがあるため法律上後見人になる道は閉ざされる。

破産手続き中の者

多額の債務を抱えて自己破産の手続きを申し立てた破産者は、自身の財産管理を適切に行えなかったため、他人の財産を管理することは難しいと法律は判断する。
後見人には被後見人の資産を適切に管理し、必要な支出と不要な支出を判断する能力が不可欠なため、破産者だとなることができない。

本人との訴訟をした者やその配偶者・直系血族

被後見人と裁判で争っている人や、争っている人の夫・妻・子などは、本人の代理行為を行う後見人になると利害が相反してしまう。
後見人は本人の利益を最優先で考えなければならないため係争中であったり争ったりしたことのある人はなれない。

行方不明者

後見人は継続的に職務を遂行する必要があるため、行方や所在が不明な者だと業務を行うことが物理的に困難。
常に連絡が取れ、いつでも職務を遂行できる状態にある人が後見人として要求されている。

 

法定後見では裁判所が最終判断をする

本人の判断能力がすでに低下しておりすぐにでも支援が必要な場合は「法定後見」という枠組みで申し立てを行います。

このとき親族が候補者として希望を示すことはできますが、最終的に選ぶのは裁判所です。裁判所は以下の事情を総合的に判断し、もっとも適切と思われる人物を選びます。

  • 本人の財産状況
  • 親族関係
  • 候補者の適性
  • 本人との利害関係の有無 など

特に財産が多い場合や、遺産分割などの法的に複雑な手続きが予想される場合は、司法書士などの専門職が選任される傾向があります。
※親族後見人が選任された場合でも、不正を防ぐために後見監督人として専門家が選任されることがある。

 

任意後見では本人が選べる

本人がまだ判断能力を持っているうちに、「将来、この人に後見人になってもらいたい」という契約を結んでから申し立てを行う枠組みが「任意後見」です。

任意後見には、自身の信頼する人を事前に指定できるというメリットがあります。

ただし、任意後見契約を結んでいてもその方が欠格事由に該当してしまうと、後見人になることはできません。また、本人の判断能力が低下した時点で任意後見監督人の選任申し立てをしなければ契約は有効に機能しないため、その手続きも必要です。

なお、法定後見でも任意後見でも、制度の性質や報酬の負担、選任される可能性がある後見人のことなどについて十分な理解をもった上で申し立てすることが大切です。申し立て後のやり直しは認められないため、事前に親族や専門家に相談し、本当に制度が必要か、どのような形での利用が最適かを検討してから手続きを進めましょう。