大原司法書士事務所

【実例】付き合いがない共同相続人がいるときの遺産分割

【実例】付き合いがない共同相続人がいるときの遺産分割

カテゴリ:司法書士コラム

今回は、筆者が実際に経験した遺産分割協議に基づく相続登記についてご説明いたします。法定相続分の譲渡や、不動産相続における代償分割の活用など、実際の遺産分割に際してご活用いただければ幸いです。

特に2024年4月からは相続登記が義務化されておりますので、より円滑に不動産相続を進めることの重要性が増しています。

 

代襲相続で付き合いのない方も相続人に

本事例における被相続人は昭和15年生まれの男性で、令和5年に亡くなりました。

奥様が存命ですがお子様はなく、兄弟姉妹のうち1名が存命、他の4名は先に亡くなっていて、甥・姪に当たる方が8名おられました。

つまり、いわゆる「代襲相続人」が8名もおられ、そのほとんどが日ごろのお付き合いがない方々であった、ということです。

戦前は兄弟姉妹の多い家庭もざらですし、高齢化が進んでいます。そのため亡くなった場合には甥姪が代襲相続人になられるケースも結構多いのです。

また法定相続分については、奥様が4分の3、兄弟姉妹が4分の1ですが、もともと兄弟姉妹が5人おられたため、それぞれの法定相続分は20分の1ずつになります。

存命の妹さんはそのまま20分の1となるのですが、代襲相続人はその親の相続分を分割相続するのでさらに細分化します。事例ではそれぞれ2人ずつだったので、たまたまですが40分の1ずつになりました。

・・・よって、本事例の法定相続人と法定相続分は次のように整理できます。

 

  • 配偶者(妻):法定相続分は「3/4」
  • 妹×1   :法定相続分は「1/20」
  • 甥・姪×8 :法定相続分は「1/40」

 

 

共同相続人の関係性が希薄であるときの問題点

相続人の全員で遺産分割について話し合い、合意を取るのが原則である。しかし共同相続人の関係性が希薄だと、まず全員が揃う協議の場を設けるのにも時間がかかり、さらに話し合いも難航しやすい。物理的な距離が遠い場合にもスムーズには進めにくくなる。

 

 

法定相続人へのご連絡

続いて、法定相続人へのご連絡を行いました。

まずは、日ごろからあまりお付き合いのない方もいらっしゃるので、「相続手続きのご案内」として、被相続人の〇〇様が亡くなったこと、貴殿には40分の1の法定相続分があること、相続手続きとして採り得る選択肢は次の2つであることを御案内しました。

 

  • 40分の1の法定相続分を奥様に譲渡する。
  • そのまま法定相続分で遺産分割協議に参加する。

 

もちろん、原則としては共同相続人全員での遺産分割協議が望ましいのでしょうが、全国に散らばっている親戚の方々を一堂に集めることはまず無理ですし、日ごろの付き合いもないので、(1)の選択を期待しての措置でした。

・・・この結果、8人の甥・姪様のうち、6名の方から奥様への相続分譲渡を受けることができました。

 

法定相続分の譲渡について

相続人本人が、自らの法定相続分を他人に譲り渡すことも可能。法定相続分を譲渡するとその方の相続権はなくなるが、遺産分割協議に参加する必要がなくなるなど、相続トラブルを回避するうえでは有効な手段でもある。

相続分譲渡証明書について

法定相続分の譲渡をするのに特別な手続は不要で、口頭であっても当事者間の合意さえあれば一応有効ではある。しかし相続分の譲渡について証明ができないと、他の相続人に譲渡があったという事実を認めてもらえずトラブルになるリスクがある。そこで当事者の署名や押印を施した「相続分譲渡証明書(※下記に見本)」を作成し、客観的に譲渡があったことを証明できるようにしておく。

 

 

********************* 相続分譲渡証明書の見本 *********************

相続分譲渡証明書

 

(被相続人の表示)

氏  名      

最後の本籍     

最後の住所     

生年月日      

死亡年月日     

 

私は、被相続人○○の姉である亡き母○○の代襲相続人として、法定相続分40分の1を有していますが、本日この法定相続分全部を下記の者に譲渡します。

 

              令和6年 月 日

 

代襲相続人

住所

氏名                          (実印)

 

譲受人

住所

氏名

 

                            以上

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不動産の代償分割を提案

妹様と甥姪様2人は遺産分割協議をご希望でしたので、遺産分割協議をすることになりました。

遺産は奥様が引き続きお住いの不動産と、預貯金がありましたので、協議を円滑に進め、かつ奥様のお住まいを確保するために、代償分割の方法を選択しました。

※「代償分割」は、全ての遺産を奥様が相続され、共同相続人の法定相続分について別途金銭で代償金を支払うという方法です。

不動産については、相続税評価額で代償にあたっての価格とし、預貯金との合計額について法定相続分の代償金を支払うこととしました。

また、本事例では共同相続人が遠方にいることから、「遺産分割協議書」として順次署名押印をしてもらう形は採用しませんでした。個々の共同相続人に遺産分割の結果を通知し、その内容に同意をしてもらうという形で合意を取る「遺産分割協議証明書(※下記に見本)」を取得することとしました。

・・・結果、代償金支払いという手法が効果的だったようで、遺産分割協議証明書の取得にもさほど時間をかけることなく遺産分割を終えることができました。

 

 

遺産に不動産があるときの問題点

遺産に不動産がある場合、取得した人物の取り分が大きくなって相続分のバランスが崩れることがある。共有とすることでバランスを調整できるが、この場合は管理や処分などが難しくなり、別の問題を生じる。代償分割の場合は現金の負担が取得者にかかるが、相続分のバランスも整えつつ特定の人物が不動産を所有できるようになる。そのため現在も住まいとして使っている家族がいるときなどに有効。

不動産を相続する場合は「相続登記」が必要。従来任意とされていたが、2024年4月以降は相続登記が義務化された。この改正法は「所在者不明の不動産が全国に散在しており、空き家が社会問題になっていたと」という背景が一因で施行されている。

また、この改正には、2024年3月以前の不動産相続にも登記の義務化が適用されるという特徴がある。

遺産分割協議証明書について

遺産分割協議証明書は、遺産分割協議が成立したという事実を個々の共同相続人が証明する書面。

相続人の全員が一堂に会するのが難しいときでも、多数の共同相続人に順次署名・押印をしてもらう手間を避け、途中で紛失等をしてしまう危険を回避できる。そのため遠隔地に相続人が散らばっているときなどに活用すると便利。ただし相続人のうち1人でも遺産分割協議証明書を提出してくれないと遺産分割は成立させられない。

 

 

********************* 遺産分割協議証明書の見本 *********************

 

遺産分割協議証明書

 

被相続人の表示

氏  名      

最後の本籍     

最後の住所     

生年月日      

死亡年月日     

 

被相続人の遺産相続につき、被相続人の妻〇〇、被相続人の妹〇〇、被相続人の甥〇〇、被相続人の姪〇〇は、下記の遺産について、〇〇がすべてこれを相続し、他の3名に法定相続分に応じて代償金を支払う旨の遺産分割協議を行ったので、本日、この事実をここに証明します。

 

                   記

1.預貯金

(1)

(2)

 

2.不動産

(1)   土地

(2)   建物

(3)   :

 

3.代償金支払い

(1)   代償金は、〇〇に〇〇円、〇〇に各〇〇円ずつ支払う。

(2)   代償金の支払は、〇〇が預金の相続手続きを完了した後に、振り込みの方法により行う。

 

以上

 

                                                    令和6年 月 日

 

住所

氏名                          (実印)

 

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