登録免許税とは|課税対象や計算方法、納付手続きを紹介
カテゴリ:司法書士コラム
登録免許税は不動産登記や会社設立、各種免許取得などさまざまな手続きに際して課税される国税です。どのような意義を持つ税金なのか、どうやって税額を計算するのか、そしてその税金はどうやって納めるのか、基本的なことをここで紹介します。
登録免許税の概要
登録免許税は、不動産・会社・船舶・航空機などの登記や、特許・免許・許可等の手続きの際に課税される国税です。
この税金は、私たちの権利を公的に認証するための手続きに対して課される、手数料的な性格を持つものです。登記に関する手続きだけでも次のようにさまざまな種類があり、それぞれに登録免許税が発生します。登記に限っていえば、登記所に支払う「登記手数料」と考えた方がわかりやすいでしょう。
- 土地・建物の売買や相続、贈与等に基づく所有権の移転登記
- 建物を新築したときの保存登記
- 配偶者居住権(相続後の配偶者が無償で居住する権利)の設定登記
- 株式会社や合同会社等の設立登記
- 株式会社や合同会社の資本金増額の登記
- 取締役等の変更登記
- 本店または支店の移転の登記
- 支店設置の登記
- 個人のする商号や支配人の登記
- 未成年者に関する営業登記 など
なお、手続きを行う機関の所在地を管轄とする税務署へ納付することになっていますが、実際には登記申請時に登記申請書に貼付して支払うのが一般的です。
登録免許税の課税対象と適用税率
登録免許税の課税対象と税率は、手続きの種類によって異なる体系を取っています。主要な課税対象および税率を見ていきましょう。
不動産登記に関する主な税率
所有権の移転に関しては、手続きを行う原因がどのような取引であったのかにより、税率が次のとおり大きく異なります。
原因 | 課税標準 | 適用税率 | 軽減税率 |
---|---|---|---|
売買(土地) | 不動産の価額 | 2% | 2026年3月31日まで1.5% |
売買(建物) | 2% | 住宅用家屋は所定の条件を満たせば軽減あり | |
相続・法人の合併 | 0.4% | 相続による土地は所定の条件を満たせば免税措置あり | |
贈与・交換など | 2% | ― |
ほかには「所有権の保存登記」や「抵当権・根抵当権の設定登記」などもあります。
保存登記における税率は基本的に0.4%ですが、状況により軽減税率が適用できる場合もあります。
抵当権等に関しても、債権金額または極度額に対して0.4%の税率が適用されますが、住宅ローン等特定の条件下では0.1%に軽減できることがあります。
なお、抵当権の抹消や所有者の住所・氏名の変更に関しては、物件1つにつき1,000円とされています。
※同一の申請書で20以上の物件を対象とするときは2万円。
登録免許税は「課税標準×税率」で計算
税額の計算は「課税標準×税率」により行いますが、登記の種類により金額は異なります。
- 所有権移転や保存の登記の場合・・・「不動産の価額」
- 固定資産課税台帳の価格を基準とする
- 価格が付けられていないときは登記所が認定する
- 1,000円未満は切捨(ただし価格が1,000円未満なら課税標準は1,000円とする)
- 抵当権や根抵当権の設定を行う登記の場合・・・「債権金額」または「極度額」
- 抵当権なら債権金額
- 根抵当権なら極度額
- 1,000円未満は切捨(ただし金額が1,000円未満なら課税標準は1,000円とする)
- 抵当権抹消や住所変更の登記の場合・・・「不動産の数」
この額に税率を乗じて、納付すべき税額を算定します。なお計算結果に100円未満の端数が出てきたときはこれを切り捨てて、計算結果が1,000円未満となるときは納付額が1,000円になります。
計算例
いくつか計算例を示します。どのようにして金額を調べるのか、どの程度の税負担が発生するのかをご確認ください。
例1)評価額が500万円の土地について、売買を原因とする登記を行う場合
課税標準:5,000,000円
税率:1.5%
納付税額:5,000,000円×1.5%=75,000円
例2)評価額1,380万円の土地について、相続を原因とする登記を行う場合
課税標準:13,800,000円
税率:0.4%
納付税額:13,800,000円×0.4%=55,200円
例3)債権額850万円を担保する抵当権の設定を原因とする登記を行う場合
課税標準:8,500,000円
税率:0.4%
納付税額:8,500,000円×0.4%=34,000円
登録免許税の軽減・免除措置
軽減措置・免除措置の適用を受けられるケースも多いです。
たとえば「住宅用家屋に関する軽減措置」があります。個人が住宅用家屋を取得した場合において、次のように税額の負担を軽減する措置が運用されています。
- 保存登記の場合・・・税率0.4%→0.15%へ軽減
- 移転登記の場合・・・税率2.0%→0.3%へ軽減
※2027年3月31日まで
そのほか、自然災害により被害を受けた方について「被災した建物に代わる建物の所有権保存・移転」や「被災代替建物の敷地の用に供される土地の所有権移転」等についての免税措置も設けられています。
相続についても免税措置があり、「相続で土地の所有権を得た方がその登記前に亡くなった場合」や「価額100万円以下の物件の場合」には、本来0.4%の税率で算出されるところ、免税してもらうことができます(ただし2027年3月31日まで)。
登録免許税の納付方法
登録免許税を納める原則的方法は「現金納付」です。現金を納め、その領収証書を受け取り登記申請書等に貼付して提出する方法です。
「印紙納付」を選択することも可能で、この場合、算出された税額に相当する収入印紙を購入したのち納付用の台紙等に貼り付けて提出します。
実際にはこの方法によるのが一般的です。
また利便性の高い「キャッシュレス納付」を選択することもできます。登記機関から納付番号を取得したのち、インターネットバンキングや銀行ATMを使って納付する、またはクレジットカードや電子マネー、QRコードを使って納付するやり方もあります。