遺言書を作成するときの流れ|必要な情報の整理から保管・見直しまで
カテゴリ:司法書士コラム
遺言書は最後の思いを残すために作成する文書です。法的な効力も持つため相続手続きにおいて重要な意味も持つのですが、適切な方法で作成しなければ十分に意味をなしません。
そこで当記事では作成方法を流れに沿ってわかりやすく解説していきます。遺言書について詳しくない方はここで手順を確認してください。
遺言書の基本
遺言書は、人が亡くなった後に自分の財産をどのように分配するかを示す文書であり、簡単にいうと「最後の願い」を書き記したものです。
遺言書を作ることで思い通りに財産を分けることができ、たとえばお世話になった方に感謝の気持ちを込めて財産の一部を渡したり、家族の中で特に支援が必要な人により多くの財産を残したりすることもできます。
遺言書が作られていなくても相続は行われますが、法律で決められた方法で財産が分けられます。そのため故人の希望通りにはならないかもしれません。また、遺族の間で「誰がどの財産をもらうべきか」といった話し合いが必要になり、その話し合いが発端となり争いに発展することもあります。
遺言書を作ればこうした問題も防ぎやすくなるのです。相続人が話し合いをする手間も小さくなり、スムーズに相続を進めることができるでしょう。ただし、遺言書を作る際には一定の決まりに従わなければなりません。
遺言書を作る流れ
遺言書の作成で失敗しないためには、段階を踏んで着実に進めていくことが重要です。
以下では遺言書を作る一般的な流れを説明していきますので、基本的な手順を確認しておきましょう。
必要な情報の整理
遺言書作成の準備としてまずは情報の整理を始めましょう。ご自身の財産、推定相続人、遺言の内容について考えていきます。
- 自分の財産を把握する
- 預貯金、不動産、株式など自分が持っている財産をすべて書き出す。
- 通帳や不動産の権利書などを確認しながらできるだけ正確に記録していく。
- 推定相続人を確認する
- 法律で定められた相続人(配偶者、子供、親など)を確認する。
- 相続人の判定が難しいときは相続問題を取り扱っている司法書士などに相談。
- 遺言の内容を考える
- 誰に、何を、どのくらい相続させたいか考える。
- 遺留分(法定相続人に法律上留保されている最低限の相続分)にも配慮する。
専門家への相談
遺言書作成には法律的な知識が必要なため、専門家に相談するのがおすすめです。
司法書士や行政書士、弁護士などの実務家、あるいは地域の相談窓口などを頼ると良いです。まずはメールや電話などで初回相談の予約を取りましょう。実際に面談してみたときの印象なども参考にしながら、依頼する専門家を選びます。
相談時には財産や相続人情報が確認できる資料もあるとスムーズです。
遺言内容を文書にまとめる
遺言書で実現したいことを伝え、遺言書として適切な体裁に文言を調整していきます。
表現の仕方、使用する文言などによって効果が変わってしまうこともありますので要注意です。複数の意味に読み取れてしまうと相続人間、受遺者との間で揉めてしまう危険性があるため、法的な解釈にブレが生じないようにしなくてはなりません。
また、遺言書を使っても相続のルールなどは変えられませんし、できることにも限りがあります。このあたりを的確に捉えつつ文書を作っていかなくてはなりません。
相続開始まで保管
遺言書が完成したあとの保管にも配慮が必要です。
自筆証書遺言や秘密証書遺言の場合は遺言者自身が保管場所を考え、安全に管理していかないといけません。銀行の貸金庫や法務局(自筆証書遺言に限る)に預けることも可能です。
公正証書遺言に関しては原本が公証役場に必ず保管されますので、遺言者自身が保管について考えることはありません。
作成した遺言書の見直しも重要
一度作成した遺言書も定期的に見直すべきです。生活に変化があったとき、たとえば財産の構成に大きな変化が生じたときや、財産を受け取ってもらうはずであった方が先に亡くなったときには遺言内容も見直します。
- 見直しが必要なシチュエーション
- 家族構成の変化(結婚、離婚、出産、養子縁組など)
- 財産状況の変化(不動産の取得や売却、株式や預金の増減など)
- 相続人の変化(病気、事故など)
- 法律の改正(民法や相続税法の変更など)
- 見直しの方法
- 現在の遺言書の内容を確認して変更を要するかどうか検討する。
- 変更が必要な場合は既存の遺言書を修正するか、新たに遺言書を作成する。
既存の遺言書に加除訂正を加えて遺言内容を変えることもできますが、変更箇所が多いときは新しく作り直した方が早いケースもあります。
※2つ遺言書が作られていたときは、後日作成したものが有効な遺言書として機能する。混乱を避けるため先に作成した遺言書は破棄しておくと良い。
遺言書の種類によって作成方法が違う
緊急時を除き、遺言書は自筆証書遺言と公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類から選ぶことができます。
それぞれに作成方法が異なっており、たとえば自筆証書遺言であれば「全文を自筆で書かなければならない」という大きな特徴を持ちます。財産目録を別紙として作成するときはパソコンで作成してプリントアウトしてもかまいませんが、そのほかの遺言内容の部分については手書きが求められています。
これに対し公正証書遺言は公証役場で作成するもので、直接筆記をするのは公証人です。遺言者は遺言内容を証人と公証人の面前で口授しなければならず、手書きの必要はないものの遺言内容を一部の人には知られることとなります。また、作成日当日までには打ち合わせなども必要で、コストも発生します。
秘密証書遺言に関しては、本文は遺言者自身で作成(手書きでなくてもいい)し、これを封筒に入れます。封筒には遺言書本文に使用したものと同じ印鑑を使って押印しないといけません。さらにその封筒を公証役場に持って行き、公証人と証人の面前で遺言書である旨を申述。遺言者・証人・公証人が封筒に署名押印することで完成します。
それぞれ異なる特徴がありますので、状況に応じて適切な方法を選択することが重要です。